山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
おとぎ話じゃないんだぜ
92歳の女性入居者Aさんは、脳梗塞を起こし入院。自分の人生に絶望し、まったく食べなくなったAさんを、職員達が毎日のようにお見舞いに行き、励まし、Aさんは食べられるようになって退院しました。しかし、それから数か月後、今度は違う病気で再び入院。Aさんは、再び絶望の淵へ。食事をまったく食べなくなりました。
病院の担当医から「原因となったものは治りましたが、食事をまったく食べていません。本人が食べる気がないのですから、どうしようもないですよ。説得して、一口食べさせたら、誤嚥性肺炎を起こしましたからね。息子さんは、そちらの施設に帰れば食べるようになると思っているみたいですけど、おとぎ話じゃないんだから。そちらでは、点滴もできないでしょ?年齢を考えても、帰ってすぐに……っていうことも十分あり得ます。それでも息子さんは帰したい、って言うんですけど、受け入れられますか?」と、少し呆れているような電話をもらいました。
私は、「ありがとうございます。大丈夫です。迎えに行きます」と答えました。
ナースステーションに声をかけ、Aさんの病室の前に行くと、奥に更に痩せ細ったAさんが寝ていました。看護師さんから、「状態は良くないです」と小声で言われました。「わかりました」と答え、Aさんの所へ。
「元気ですかーッ!!」
そのように私が声をかけると、Aさんはパチッと目を開け、「ひゃーっ!」と悲鳴?を上げ、満面の笑顔を見せてくれました。
「会いたかった……会いたかったよ……」と涙を流していました。
看護師さんが、Aさんの姿に驚き、「凄いですね。入院中、一度も笑顔は見ませんでした……」と言っていました。
施設に戻ったAさん。やってくれました。お昼ご飯、全部召し上がりました。
それを見て職員や家族皆が喜びました。
息子さんから、「ありがとうございます!でも、まったく食べない、一口食べれば誤嚥性肺炎。そんな人をどうして受け入れられるのですか?」と質問がありました。
うまい言葉は見つかりません。ただ、「まぁ、いつも一緒にいるから、なんとなく……」と答えました。
関係性を重んじる。介護という仕事だからこそ、起こせる奇跡。
おとぎ話じゃないんだぜ。
なんちゃって。
ケアコミュニティ・せたカフェ共同代表の磯崎さんとダーッ!