山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
オリンピック選手の輝き
連日オリンピックが盛り上がっています。地球の裏側で行われるオリンピックを見るために、深夜までもしくは早朝に起きてテレビで応援する皆さん。そこまでして見たい理由は、感動があるからだと思います。選手たちの喜び、悔しさ、物事に真剣に取り組むキラキラした表情には、見る人を感動させるものがあります。
私が以前管理者をしていたグループホーム。毎年、『OKオリンピック』という入居者の皆さんと職員の運動会を開催していました。
その日限りの企画ではなく、大会の一か月ほど前から練習に入ります。認知症の方だから、練習しても忘れてしまうことが多いけど、この辺の律義さも私は大好きでした。
選手宣誓、国歌斉唱、玉入れ、綱引き、リレー・・・・・・ユニット同士の対抗戦。大笑いしながらも真剣な表情で取り組み、勝って大喜び、負けてブーイング。お昼はレジャーシートを敷いてお弁当。お弁当も、深夜までかけて仕込み、早朝から作り、職員達も入居者さんに喜んでもらおうと、本当に一生懸命でした。職員達もお年寄りに負けないくらい楽しんでいました。
こんな楽しい施設だから、見学に来た方達が「ここに入居したい!」と言ってくださり、入居の申込者が後を絶ちませんでした。
誤解を恐れず言えば、「こんな楽しい施設」だから入居している方達が亡くならないのでしょう。よく笑い、よく食べ、よく動く。こんな生活をしていると、なかなか病気にもならないものです。入居待機者は増える一方でした。問い合わせの電話では、「それはそうです。あれだけ楽しく生活していたら、あの世に行くのがもったいない。空きが出ないのもわかります」と言われました。
このような施設環境を作れた理由は、入居者やご家族の理解があったこと、そして職員達のハートです。とにかくみんながよく協力し合ってくれました。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。そうでなければ、こんなに楽しい毎日は創造できません。素晴らしい仲間(職員)に出会えたことに、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
もう一つ、見学の方によく言われたのが、「ここはお年寄りも職員も、いい表情をしていますね」。この言葉を聴くのが、管理者として最も嬉しいことでした。
オリンピック選手と同じように、入居者と職員のキラキラと輝く表情は、見る人に感動を与えます。
そんな施設を作っていきたい。そんな施設を増やしていきたい。人はいくつになっても輝ける。そのお手伝いをできるのが、介護という素晴らしい仕事です。