山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
弱り目に祟り目
休日の夜に体調を崩しました。激しい頭痛と悪寒。これはただ事じゃない。自分でも危険を感じ、救急病院に電話をしました。夜の9時頃のことでした。
「すみません。頭痛がひどくて、悪寒がするのです。申し訳ありませんが、今から診ていただけないでしょうか?」
「お名前いいですか? 生年月日は?」「何時から症状ありました?」「あ~その時間じゃ、もしインフルエンザだとしても、検査してもまだ出ないんですよ。それでもいいですか?」「来ても、何時間待つかわかりませんよ。救急車で来られる方もいるので。4~5時間待ってもらうかもしれませんね」
断りました。激しい頭痛と悪寒がある中で、4~5時間は待てない。家で安静にしてることにしました。
決して、病院の事情をわからないわけではありません。実際に急患も多かったのだろうし、忙しかったのでしょう。
私がつらかったのは、電話に出た方の対応です。文字では伝わりませんが、明らかに声のトーンを下げ、来てほしくない気持ちが電話口から伝わってきました。受ける気ないのに、なんで名前や生年月日聞いたんだよ? 正直そう思いました。
病気の時、身体がつらいのは本人です。藁にもすがる思いでいる時、どうして優しい言葉ひとつかけられないのでしょう。たとえ、受けられない事情があるにせよ、なぜ相手に共感するような言葉をかけられないのでしょう。
これは、介護でも同じだと思います。私たちのお客様は、「要介護高齢者」といわれる、介護を要する方たちです。身体に痛みがあったり、自分でやりたくてもできないこともある。その人が何かお願いしてきた時に、職員が「忙しいから」といって冷たい態度をとることも、これとまったく同じことだと思います。
「大丈夫?」その一言で、気持ちが救われるのです。
忙しいからといって、横柄な態度をとったり、冷たい言葉をかけて、気が晴れますか? そうすることで、もしも自分の気が晴れたり、優越感に浸れるようであれば、医療や福祉の仕事は向いていない。基本の基本。「需要と共感」こそ、原点です。