山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
奇跡は起きるのではなく、起こすもの
ラグビーのワールドカップで日本チームが快進撃を起こし、国内でのラグビーの知名度、関心度が急上昇しました。
改めて、この間のラグビー界の状況を聞くと、90年代に人気絶頂を迎えたのを境に、徐々にラグビー人気は低迷。競技人口は右肩下がりとなり、若年層となる高校ラグビー界は深刻。1校では15名の選手(部員)を確保することができず、他校と合同でチームを組んで出場するケースが増えているとのこと。
裾野が広がらなければ、その競技は当然発展しません。このままでは、学生はおろか、社会人ラグビーでさえも存続の危機にあった日本チームのワールドカップにかける意気込みは凄まじかった。何度も放送されているのでご存知かと思いますが、「世界一厳しい練習」に耐えた日本チームは、現段階では「奇跡」と言っても過言ではない結果を出し、日本にラグビー旋風を巻き起こしました。
これにより、日本国内でのラグビーの注目度は高まり、今後は新聞、雑誌、テレビの中継回数が増えるなど、メディアに登場する回数は格段に増えることでしょう。
この逆転現象。介護業界でも学ぶべき点が多いのではないでしょうか。介護は競技ではありませんが、その職に就く人、就きたいという人は確実に減っています。さらに悪いことに、介護の場合、メディアで取り上げられるのは、ほとんどがネガティブな報道であること。虐待、事件、低賃金、重労働、人員不足…。これでは、なりたい職業からかけ離れて当然です。
帰国後の会見で、「ラグビーの魅力を知ってほしい」「会場に足を運んでください」と多くの代表選手が言っていました。競技を維持するためには、競技人口が増えなくてはならない。競技人口が増えなければ、強いチーム、世界で勝てるチームは作れない。選手たちは、私利私欲のために戦っているのではなく、日本ラグビーの未来のために戦っているのだと感じました。
この気持ち、この団結心が、日本の介護業界にも必要ではないでしょうか。ラグビーJAPANが厳しい練習に耐え必死に戦う姿は、日本中に感動を与えました。おそらく今後、日本国内のラグビー競技人口は増えていくでしょう。
介護は競技ではないし、戦いでもない。でも、人に感動を与える要素はたくさん持っているし、努力した結果、成長できるすばらしい仕事。誇りを持てる仕事です。この誇りを胸に団結し、介護がもつ本当の力、本当の魅力を発信していきましょう。
ラグビーJAPANの快進撃、出発の際に空港に見送りに来たファンの数が、帰国の際には何倍にも膨れ上がった奇跡は、彼らが自分たちの力で起こした奇跡です。決して、奇跡が起きたのではなく、起こした奇跡なのです。
私たちも、暗い話題の多い介護業界で、奇跡を起こしましょう。
そのために、私自身も次の高いステージを目指して邁進していく所存です。