山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
この国の明日はどっちだ!
高齢者介護の仕事におけるネガティブな報道について、前回のブログで書いたところでしたが、今週もまた、社会に衝撃を与える報道がありました。介護施設で、職員による要介護高齢者への虐待です。
高齢者の口に指を入れ、鼻をふさぐなどの暴行をし、それを携帯の動画に撮っていた。虐待を受けている高齢者は「やめて」と言っているにもかかわらず、容疑者となった男たちの笑い声が記録されていた。
虐待を受けたのは、93歳の女性。当然、要介護状態にありますから、若い男性3人にこのような行為を受けても、抵抗及ばず、どれだけ怖かったことか。どれだけ悔しかったことか。どれだけ悲しかったことか。
彼らは、自分のお婆ちゃんであったとしても、同じことができるのか。いや、もしかしたら、できてしまうのかもしれません。これは、介護現場における指導やモラルの教育ができていないなどという狭い問題ではありません。
私たちは、すでに成人した人を介護職として多く採用します。そこから、介護職としての知識や技術を指導していくわけですが、正直、家庭や学校で、最低限身に付けてきてほしい常識やマナーに欠けている人が多いと感じます。このことは、同業の方が集まる場でよく話題になりますから、多くの事業所が同じ悩みを抱えていると思います。
前回お伝えした「介護人材の確保」について、自分たちがやらなければならない!と書きましたが、国の動向は、人材を確保するために、マイルドヤンキーがどうとか、介護保育士(仮称)がどうとか、数の確保だけが問題視されています。質が問われず、数の確保だけで良しとなったら、一体どうなるのでしょうか。
しかし、このような状況を嘆いていても、何も始まりません。私たちが、自らの手で「介護職」という職業地位を向上させ、今回の事件のような悪質な人間を許さない。そういう闘いに挑まなければ、目の前の高齢者を守ることはできないのです。
かつて私たちは、保護観察中の少年を、更生の場としてボランティア受け入れしたことがあります。最初の内は、挨拶はおろか、目を合わすこともしない、何を言われても返事もしない、約束した日に来ない。そんな状態でした。それでも、私たちは彼と真剣に向き合いました。これも一つの闘いです。そして、彼は最後までボランティア活動を続け、学校へ復学し、卒業したのです。彼が、卒業の報告と御礼に来た時は、熱いものが込みあげてきました。
介護という職業は、人が成長できるすばらしい職業です。しかし、それも環境次第。私たち先輩が、しっかりとした指導をしていけることが前提条件です。
4月。新年度になりました。新人職員たちが入ってきた職場も多いと思います。先輩となる皆さんは、ぜひ、介護の仕事の魅力について、大いに語ってください。指導は苦手、話すことは苦手。そういった苦手意識を持った人はたくさんいますが、上手に話す必要はないのです。
今の時代の高齢者は、戦争を経験し、大切な家族、愛する人を失い、それでも必死に生きてきました。物の無い時代から、急激な経済成長、目まぐるしい時代の変化に、しがみつくように必死に生きてこられた方たちです。苦労は、いやというほどしてきた人たち。晩年、この人たちが幸せになってほしい、そう伝えることは、そんなに難しいことではないはずです。
介護職の皆さん、新たなスタート!一緒に頑張りましょう!