山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
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介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
介護職よ、感情武装せよ!
このタイトルにニヤリとした人は、かなり熱心なプロレスファンだと思います(笑)。
介護業界は混乱しています。本日(4月1日)から制度が改正されるというのに、概要の説明が昨日今日行われているような状態。自治体の説明も3月末に行われ、現場からの質問に答えられず、持ち帰るような異常事態。行政頼みじゃ対応できない。現場の職員たちが自主的に制度解釈を進めているところも多いようです。
今回の制度改正に限らず、介護業界は常に混乱の渦中に置かれているような気がします。虐待、介護人材不足、認知症の増加、2025年問題…。どれもこれも、ネガティブな話題ばかり。介護人材の確保が最重要課題といっても、これでは「なりたい職業」からかけ離れてしまいます。
厚生労働省内の対策室などで検討されている内容は、「介護職」に未来を感じる素敵な内容です。ただし、こういった内容はほとんど報道されることがありません。たしかに、楽観できない状況であることは否めませんが、危機感をあおるような内容のほうが関心をもたれやすい、ということでしょうか。
メディアの影響力はすごいものがあります。私たちの時代は、あしたのジョーやタイガーマスクを見て、プロボクサーやプロレスラーになりたいと思う子どもが多かった。介護職も、小学生の「なりたい職業ランキング」に名を連ねるようにならなければいけない。そのためには、若者の支持が高い俳優さんなどが、ドラマや映画で介護職を演じてくれるとよいと思います。なにせ、介護現場にはドラマがあふれていますから。
しかし、まずは介護という職業が、どれだけやりがいがあり、学びがあり、自身が成長できる仕事であるかを世間に発信していかなければいけないのです。
多くの介護職が、自分の職業、自分の経験してきたことに、誇りをもっているはずです。介護は、「する側」から「される側」への一方通行の仕事と誤解されがちですが、感受性の高い介護職は、介護しながらたくさんのことを学ばせていただいていると実感しているはずです。
この職業の魅力を、語れるようにならなければいけないのです。すでに現場から退いている人が、介護という職業を整理し、講演や出版しているケースはたくさんあります。しかし、今まさに現場で介護し、それを整理して語れる介護職が必要です。
理論武装するだけではダメです。人の心は、理論だけでは動かせません。私は、人の心を動かすのに必要なものは、「論理の力」と「感情の力」だと思います。
介護職の皆さんの経験を整理し、そこでたくさんのことを教えてくれたご利用者への想い、感謝を、社会に発信していきましょう。
「介護人材の確保」そんな大それたことは、自分にはできない。誰かがやってくれる。そう思うことは普通のことです。しかし、「誰かがやる」と、みんなが思っていたとしたら、誰もやりません。
私は著書の中で、プロレスラーの長州力さんの言葉を借り、「今しかないぞ、俺たちがやるのは!」と書きました。私も「俺たち」の一人にすぎません。ぜひ、介護職の皆さんが、「俺たち」に加わってくれることを願っています。
混乱している介護現場。苦しい時だからこそ、自分たちの仕事に誇りを持ち、大切なご利用者を守るため、「感情武装」しましょう!