メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

親の心子知らず

 「親の心子知らず」。
 最近はあまり耳にしなくなりましたが、私が子どもの頃は、よく言われたものです。子どもは親の深い愛情に気づかず、好き勝手なふるまいをして、親を困らせる。自分自身をふり返って、まさにそのような子どもだったなと恥ずかしく思います。

 自分がいま組織を管理する立場になって、「親」ではないですが、職員たちをわが子のように思い、その思いや心配が伝わらずに、もどかしくなることが少なくありません。
 ただ、52年生きてきた私が「これは失敗する」と思うのは、52年間生きてきたなかで、さまざまな経験をしたからであって、そこには“失敗”という経験もあったからなのでしょう。
 失敗したからわかることがある。失敗しなければ、わからなかったこともあります。
 親は、自分がこれまでの人生経験のなかで、失敗したり、痛い思いをしたりしてきたから、大切なわが子に同じような苦労をさせたくない。だから、ついつい口や手が出てしまう。それを子どもは疎ましく思い、反抗したり、逆のことをしたりするものです。
 だから、結果がわかっていながら、失敗を恐れずチャレンジさせていくことも、ときには大事なのだと思います。失敗し、ふり返り、反省し、次に活かしていく。このプロセスを見守っていくのが親の役目、上司の役目なのかもしれません。

 たとえば、20歳の職員Aさんが「こうしたほうがいい!」と主張していることに対して、30歳のリーダーBさんが、「それは違う! 何を言っているんだ!」と怒っています。その様子を見て50歳の管理職Cさんは、「Aさんの言っていることは、Bさんが若い頃、私(Cさん)に言ってきたことと同じだなあ」と懐かしく見ている。
 Bさんも、通ってきた道ということです。自分が通ってきた道だから、それをすることで失敗することがわかる。Aさんが子で、Bさんは親で、Cさんは祖父母のような感じでしょうか。

 「子ども叱るな来た道だから、年寄り笑うな行く道だから」。
 こんな言葉を聞いたことがあります。何かの一節だと思いますが、素敵な言葉だと思います。
 組織として、人として、許されない失敗があります。それは当然回避しなければなりませんが、人が育つ過程で必要な失敗であれば、見守ってあげることも必要です。
 親や上司から、自分の考えを頭ごなしに否定されて、悔しい思いをした経験はありませんか。みんな一緒に生きている。みんな一緒に成長しているのです。“教育”ならぬ“共育”という視点で、職員の成長を見守ってあげましょう。

著書のご案内

山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8

【次の記事】

物事の見方