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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

アドボカシー

 「アドボカシー」という言葉があります。日本語では、「権利擁護」と訳されることの多い言葉です。
 私たち、福祉分野においては、自分の意思を伝えることが難しい人の気持ちを代弁する、という意味合いで使われることが多いです。ご利用者の代弁者って、何をするべきなのでしょうか。何を知るべきなのでしょうか。

 私は、福祉の仕事をはじめて23年になりますが、23年前から、一年に一回、必ず行うことがあります。それは、出勤したら、朝一番でおむつと尿取りパットを着けて、パット内に排尿をすることです。そして、そのまま交換せずに、2回、3回と排尿するのです。いくら「おしっこ〇回分の吸収量」なんてうたっているパットであっても、実際にそのパットやおむつを着けたままでいると、陰部が蒸れてくるし、時間が経つと冷えてきて、身体が寒くなってきます。これを体験することによって、「おむつやパットは汚れたら、早く替えなきゃよくない」と改めて実感し、介護の仕事を始めたときの気持ちを忘れないようにしています。

 先日、この一年に一回の私の中でのイベントを行いました。朝一番でおむつとパットを着用。今回は、最近、営業の人が持ってきたおすすめ商品で、今まで私が使ったなかでは、一番高価な新商品です。朝一番で排尿をしてみると、いつもどおり、じわーっと陰部周辺に温かさが広がります。しかし、その後、数秒間で、出したものがどこかに行ってしまったかのように、着けたばかりのときの状態に戻った感覚になりました。その後、夕方までの間に、計5回、同じパット内に排尿してみました。最後こそ、少し重みや硬さを感じましたが、それまでは不快感はありませんでした。最近のものは質が上がっていることを実感しました。素晴らしい。

 といっても、私は商品紹介がしたいわけでも、何回排尿しても交換しなくて大丈夫と言いたいわけでもありません。
 「アドボカシー」、つまりご利用者の気持ちを代弁するためには、できることは実際に体験してみることが一番かと思うのです。
 本当に、その人の気持ちをすべて知るなんて不可能です。そんなことはわかっています。でも、「あなたの気持ちが知りたい」と思ってくれる人がいたら…。私だったらうれしいかなって思います。わかってくれる人はありがたいけれど、わかろうとしてくれる人がいるのも、うれしいかなって思います。

著書のご案内

山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8