山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術
超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。
- プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)
-
介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。
日本人の美徳
WBC(world baseball classic)で日本が優勝しました。視聴率の発表を見ても、その関心の高さがうかがえます。特に、アメリカで行われた準決勝、決勝は、ドラマチックな展開でしたね。多くの人が、興奮と感動を味わったのではないかと思います。
サッカーのワールドカップでもそうでしたが、日本の選手や監督の言動、また観客の行動について、世界から注目される機会が多くなっています。
勝って奢らず、負けて腐らず、対戦相手に対して敬意を払う。私は長年、武道の世界に身を置いていましたが、やはりそこでも「礼に始まり、礼に終わる」と教わり、試合中にどんなに殴り合っていても、試合が終わったら、勝っても負けても握手をして、礼をして終わるものでした。これぞ、日本人の美徳なのでしょう。
これを、いかなる場面でも、実践することはできないでしょうか。
たとえば、介護の場面。ご利用者が、排泄や入浴の介助を受けて、「ありがとう」と言ってくれます。これをやりがいと感じている介護職も少なくないですが、「ありがとう」が一方通行になっていたら、どうでしょう。「ありがとう」に対して「はい」と答える…。その場面を客観的に見てみてください。
職場の人間関係では、どうでしょう。たとえば仕事を手伝ってもらった際に、「ありがとうございます」とお礼を言った人に、「はい」と答える…。
個人的な意見ですが、「ありがとう」に対して、「いいえ」と感じよく答えること。これも、日本人の美徳なのではないかと思うのです。
武道の話に戻りますが、私が選手だった頃は、試合で勝った後のガッツポーズを禁止されていました。もちろん、勝った瞬間、これまでの苦労が報われるわけですから、喜びを爆発させたい気持ちはわかります。しかし、相手も同じように、自分の生活で様々なことを犠牲にしながら、この大会に挑んでいるのです。負けた相手の気持ちをわが身に置き換えれば、どれだけ悔しいか想像がつきます。スポーツの場面でのガッツポーズを否定はしませんが、今回のWBCで、日本選手が世界から注目されたのは、試合前、試合後の相手に対する敬意にあふれたコメントでした。
「ありがとう」に対して、無言だったり、目も合わせず「はい」と冷たく答えたりしていませんか。そんな態度なら、手伝ってくれないほうがいいと思われるかもしれません。
「ありがとう」に対して、「いいえ」と感じよく答えること。介護の場面でも、職場の人間関係でも、こんな簡単なことで、きっとやさしい空気が流れます。
「お互い様」って、日本人らしくて、素敵な言葉ですよね。
著書のご案内
-
山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!
介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8