和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
そもそもへの学
新型コロナウイルス感染症が再び拡大しており、僕のところでも様々に影響が出ています。
僕自身は月初めに四回目のワクチン接種を済ませてきましたが、大規模接種会場はガラガラで、早々に接種したい方はたくさんいるだろうと思うと、接種促進策とのミスマッチを感じてしまいました。
先日、ある大学で講義をさせていただきましたが、学生さんのみならず地域住民の方々も参加できる「公開講座」でした。
これから介護を仕事として考える学生さんと市民が一緒に学ぶってステキですよね。
つい「市民の皆さんは将来、今皆さんの周りにいる学生さんから介護を受けるかもしれないんですよ。学んでいる今の姿に触れられるってステキですよね」って言ってしまいました。
僕も所属する法人で考えていることは、自社で行っている職員研修会を利用者ご家族や市民に開放することです。開放すると言ったら大袈裟ですが、一緒に学び合える場(環境づくり)にするということです。
その意味は、利用者ご家族や市民の方々に「学びの場」を提供するというよりも、要介護状態にある方々を支援することの難しさ・知恵や工夫を凝らす「介護」に立ち向かう専門職の専門性を知っていただくこと、制度や仕組みなど置かれている環境を知っていただくなど「共有したい」と思っているからです。
つまり市民の側からの視点ではなく、「介護」を提供している僕の側からやってみたいと思っているということですね。
世の中全体にリモート環境が整ってきましたので、僕のボスをはじめうちの連中に伝えて2023年度には実現させたいです。
さて、今回も大学生たちの質問にお応えさせていただきます。
Q:学生のうちにやっておいたほうが良いことを教えてください。
「遊」を含めていろいろ思うことはありますが、学生さんなので「学」の点でお応えします。
福祉系の学生さんなので、福祉の概念や制度、介護に関する技や知は学んでいることでしょうが、ぜひ学生のうちに「脳」や「人類学」に関する書物にたくさん触れておいてはどうでしょうか。
介護という「人が生きることを支援する仕事」の中でとっても大事なことだと思っていますが「そもそもへの学」が最も重要だと思いますがね。
なぜ、僕らは何度も同じことを他人に聞かないのか。
でも、同じことを何度も確認するのはおかしなことなのか。
また、何度も確認することと確認しないことがあるのはなぜなのか。
認知症への理解がなぜ深まらないのか広まらないのかを考えたときに見えたことは、多くの人は「自分の生きる姿に多大な影響を及ぼしている脳を学んだことがない、脳が自分の暮らしの中でどんな働きをしているか考えたことがない・だから脳が壊れたときどんな自分になるかのシミュレーションをしたことがない、脳が壊れた経験がない」ことがわかり、そんな自分たちが「脳が病気に侵され生活に支障をきたしている方々を支援するなんて無茶や」と思いましたし、だからこそ「一生けんめい考えることが必要で、それぐらいしかできない」と思えました。
僕自身、学生時代に勉強をした記憶はあまりありませんが、いろんなことを考えていたようには思いますし、それが僕の今に役立っていることも間違いないでしょう。
でも今思えば、もっと脳や人類史の学問に触れていたらもっと違った支援の策が備わったように思います。
ぜひ、触れてみてください。
写真
雲って変芸自在。クジラやアンコウに見えてきますもんね。