和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
賀正 介護の仕事ってヤッパ愉しいなぁ
2022年の幕開けとなりました。
今年もよろしくお願いいたします。
グループホームで暮らすカネさん(仮名)が、いつものように「もう、帰らせていただきます」と何度も職員に伝えに来ます。
カネさんは、このグループホームは職場だと思っていらっしゃるので、やることを終えて時間が来たら我が家に帰るというのは、きわめて普通の言動ですが、帰る場所がないことを知り、帰られたら困る事情をもつ職員は、あーでもない・こーでもないと話して滞在し続けてもらえるようにしています。
2021年もあと1日残すのみとなったその日も同じような光景が繰り広げられていましたが、経営者が職員に封筒包みの現金を持参し、職員栞さん(仮名)に手渡し、あれこれ談笑していると、その光景を目にしたカネさんはすかさず二人のところに寄ってきて「ボーナス出た? いいわね」って羨まし気に言われ、続いて「ここは、まだなのよ。」と愚痴をこぼされました。
二人は「そうなんですよ。ボーナスってありがたいですね」「あらぁ~遅いですね。もう年が明けちゃいますよ」なんて共感しながらも、職員は次へのチャンスと捉え、機を見計らって話の続きをしながら浴室へ誘い、そのまま入浴となりました。
カネさん、歳を重ねて認知症の診断を受けて、自宅からグループホームに入居させられても「カネさんはカネさん」で、そこに働きに来ている⇒そこの人がボーナスを手にしたとキャッチする⇒すかさず自分はまだもらっていないとその人たちに愚痴るなんて、まだまだ人生を諦めてないですよね。いや、諦めさせない支援ができているってことでしょうから、ステキです。
以前ブログに登場していただいたガンさん(仮名)は、グループホームに入居したあとも就労支援事業所に就労に行っています。
最終日「納会」の直前の受診で、認知症への簡易スケール「長谷川式スケール」が用いられ、質問されることにあまりにも答えられない自分に落ち込んでいましたが(スケール結果は二桁から一桁に半減)、納会に参加してビンゴが当たったことがものすごく楽しかったようで、ずっと何度も「楽しかったよ」と話していました。
何が人生を豊かにするかってことですよね。
その数日前、僕が就労事業所までガンさんを送らせていただきましたが、その時のことです。
車中で話をすると、前日に雪が降ったことを憶えており、僕が道を間違えたことがわかっており、少し手前で停めたにも関わらず事業所所に向かうエレベーターの場所もわかって行動されていたので、聞いてみました「ガンさんの行かれるところは何階ですか」と。
するとハッキリ・スッと「四階だよ」と言われるので四階のボタンを押して見送りました。
でも「?」もあったので確認の意味でグループホームの方に「何階でしたかね」と電話すると「五階です」と。
「あちゃ~」
すぐエレベーターに戻ると、案の定エレベーターは四階で止まっていました。「降りてしまっていたら」と思ったものの一階のボタンを押してエレベーターを一階に戻すことにしました。
幸いガンさんは「乗ったまま」だったので大事にいたらずコトは済んだのですが、こういう支援に対する精度の悪さが今の僕なんですよね。
2022年は、僕の精度が試される機会が増えてきそうなので、ちょっぴり不安ですが、今年はまた、昨年とは違った仕事の仕方に「挑み」をと考えています。
介護事業を統括する職務者ではありますが、介護の仕事って奥深く、堀り甲斐がありますので、そこへの時間配分を取り戻して「穴掘り師復活」を試みてみようと思います。
今年もお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます。
写真
今年は寅年。
写真はうちの故猫ローですが、口を大きく開けて「ガオッ~」って叫び続けられるエネルギーをもって一年を歩んでいきます。