和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
さらば「dementia」
3月に介護保険法第五条に明記されていた「認知症とは=定義」が変わったということを書きました。
変わったところは「脳の器質的な変化」が削除されたのですが、変わったと書いた当時、なぜそれが削除されたのか僕には不明でした。
そこで、弟のような認知症専門医に「理由を調べて欲しい」と依頼していたのですが、先日その理由をやっと聞くことができました。
僕的には「脳に器質的な変化があろうがなかろうが、何かしら脳に起因する疾病等で生活に支障をきたしていることにかわりはないのだから」ということと、「脳に器質的な変化があるかどうかまで診ないまま認知症の診断を下している現状がある」ことにあるのではないかと思っていましたが「輸入」だということがわかりました。
つまり「DSM-5」という世界的に用いられる診断基準が変わったということのようです。
DSMというのは、アメリカの精神医学会が作成する精神疾患・精神障害の分類マニュアルで、正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル」、「5」は改訂5版という意味です。
しかも、痴呆症の英訳として使われてきた「dementia」という言葉も「major neurocognitive disorder」に変わったそうで、日本における「痴呆症」が「認知症」になったのと同じ動きのようです。
そうならば「痴呆症」に異議を唱え続けて「痴呆」を斬ってきた僕としては大歓迎!同時に、日本の先進性を感じました。
ちなみに「neurocognitive disorder」とは「神経認知機能の障がい」という意味です。
診断基準としては、
- A:1つ以上の認知領域(複雑性注意,実行機能,学習および記憶,言語,知覚- 運動,社会的認知)において,以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている
(1) 本人,本人をよく知る情報提供者,または臨床家による,有意な認知機能 の低下があったという懸念,および
(2) 標準化された神経心理学的検査によって,それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された,実質的な認知行為の障害 - B:毎日の活動において,認知欠損が自立を阻害する(すなわち,最低限,請求書を支払う,内服薬を管理するなどの,複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)
- C:その認知欠損は,せん妄の状況でのみ起こるものではない
- D:その認知欠損は,他の精神疾患によってうまく説明されない (例: うつ病,統合失調症).
とのことです。
つまり、一旦獲得した能力の低下により明らかに生活に支障が認められて、その因子がせん妄でも精神疾患でもない(ようだも含め)状態を認知症だと。
まぁ、僕としてはこれによって何かを変えることはなく、医師にはこれまで通り「脳の中の状態を診ていただき、今起こっていることの因子を探ってもらいたいのと、それに対する効果的な医療の有無の確認と薬物などの策、今後起こりうることの予測」をお願いし、内因と外因の両面から起こっていることを解析して、僕らにできることを見出していくだけですがね。
写真
幼稚園児の記念撮影で、写すときに「ジャンプ」と言われて跳んだ瞬間の写真ですが、僕からとうの昔に失せた「躍動感」を感じましたね。