和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
その意味を考える
以前にもブログに出ていただいた「やはた君」は、職位でいえば僕の部下ですが、僕にとっては「相棒」。
会議では僕の話をじっと聞きメモは一切取らず、自宅に戻って寝る前に会議での話を思い起こして、それを書き留める人です。
僕との関係において、やはた君には強烈なトラウマがあります。
出会った頃はデイサービスの責任者で、まれにデイサービスの様子を少し見てやはた君を呼び「やはた、愉しそうやなぁ、職員が」という言葉や、「やはた、風が悪い」と言い残して帰ったのですが、やはた君は見た目とは違って真面目な人なので「和田さんは何が言いたかったのか」がずっと残り、それを探し続けたようです。
それから17年間「僕の言葉には何か意味が隠されている」と思考し続けている人です。
つい先日やはた君が悩みを打ち明けてくれたのですが、その悩みとは「毛が薄くなってきた」ことでした。とても気にしていて、確かにそう言われて階段に上って上から全体を見ると薄くなったように思います。
その悩み話の直後に、やはた君からある事業所の入浴時の事故について僕に報告があがってきました。しかも事故内容が浴室内で転ばせてしまった事故です。
その報告に次のようなメールを返信しました。返信は「〇〇事業所事故報告について」とやはた君から送られてきた件名のまま返信してしまいました。
やはたさんへ
髪の毛のことです。
ケア次第で食い止められるそうです。
まずは頭皮をきれいにする。
市販のシャンプーではなく美容院に相談してください。
次に育毛剤など栄養補給。これも美容院に相談すると良い。
相談するところがなかったら言ってください。
前述のように、僕の言葉には何か意味があると思考する癖がついているやはた君の脳です。どんな風に考えたかというメールがこれです。
お疲れ様です。
メールを読んで、ん~~~~~???
どういうことか、かなり悩みましたが、ようやく解決出来ました。(笑)
「〇〇事業所事故報告に関して」の件名で返信がきていたので、「怪我をした利用者への事故は、洗髪の仕方(ケア)次第で食い止められる」といった内容かと思って、「えッ!?どうやったらシャンプーを変えることで今回の転倒事故を防ぐことができたのか?」悩み考えました。
「ん~~~市販のシャンプーだと、滑りやすいのか???」
何度が読んでいくうちに、もしかしたら利用者は縫合して事業所に戻ってきているので、縫合していても清潔の保持の観点から、洗髪は怠らずにやってくれよ!というメッセージかと思いました。
洗髪の仕方は、縫合した傷口以外の頭皮をきれいにして、傷口に市販シャンプーは良くないということか?とこれまた悩みました。
そして、育毛剤…
額を縫合したと僕は聞いていたけれども、もしかしたら和田さんへは頭部裂傷という報告が事業所長から入ったのかも知れない。縫合した周りについてはシャンプーが出来ないので、頭皮が汚れ固くなり、髪の毛が薄くなってしまうことがあるのか!!!
いやいや、そんな馬鹿な、一体和田さんのこのメールは、今回の〇〇事業所の事故から、何に気づき、何を伝えようとしてくれているのか…
いつも親身になって考えて下さり、有難う御座います。
考えすぎて、ハゲそうです。
このメールがきたときには大爆笑しましたが、言葉尻を捉えて他人を非難する傾向が強くなっている時代にあって、僕のメッセージに限らず、起こったこと・聞いたことを一生懸命思考して、そこから関連付けて展開しようとするやはた君から学ぶべきことが多々あります。
これからもやはた君が困れるようなメッセージをタイミングよく出せれる自分でいたいと思いますし、受けたやはた君の声を聴き洩らさない僕でいたいと思います。
お願い
僕の携帯電話のデータが消滅してしまい、たくさんの仲間や友人・知人の連絡先がわからなくなっています。
この記事を読まれた方で僕のアドレスや携帯電話番号を知っている方は、ぜひ、「氏名を記載してメールかショートメールを送ってください」ますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。
写真
僕と出会った頃は、やかんを持ち上げてお茶を汲むような方ではなく、やかんを持ち上げることもできませんでしたが、この写真の頃には、「お茶でも飲みますか」と声をかけるだけで、主体的に自分で飲むための行動をとり、やかん八分目までお茶を入れていても、座って片手で持ち上げて湯飲みに注げるようになりました。
コロナ禍でも、できることはたくさんあります。