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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

ふと、現実逃避


 鬼滅の刃というマンガがめちゃくちゃ人気のようですね。
 単行本はバカ売れ、映画は興行収入歴代記録塗り替え。グッズは鬼滅だらけと、もはや社会現象でしょ。

 僕は、どうもマンガの中で「リアル殺し合い・殺戮」に慣れていないせいか、ちびっ子たちが見ているのを垣間見ても「見たい」と思えないんです。

 僕が子供の頃(1960年代)に夢中になったマンガやそのテレビ放送(まだアニメはなく実写版でしたね)でも、撃ち合い、切り合い、互いを痛めつけるシーンはもちろんありましたが、リアルさはそうなく、ほんと友達とのケンカの延長上位の描写で「殺し合い・殺戮」とは程遠い描写でした。

 年齢なのか興味が薄れたのか、マンガを見なくなった1980年代に入って登場した「北斗の拳」というマンガからではないでしょうか。殺し合いがかなりリアルになり強烈描写になったのは。だから世代がズレている僕には免疫がないのでしょう、鬼滅は見ていられなくなるんです。

 マンガといえば、僕が子どもの頃に手にした(買ってもらえなかったので本屋で手にした記憶)のは「冒険王」「少年クラブ」「少年キング」それによく知られている「少年サンデー」「少年マガジン」という月刊誌・週刊誌で、手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄などのキャラクターマンガやSFマンガに交じって、まだ「ゼロ戦隼人」「紫電改のタカ」といった戦争物が残っていましたね。街頭にも傷痍軍人さんが座って、道行く人々から寄付をもらっていました。

 マンガやおもちゃを買えるようになったのはアルバイトを始めた小学校5年生・1966年頃ですから、ちょうどイギリスの特撮人形劇「サンダーバード」の放送と重なっています。
 サンダーバードは、テレビ放送に夢中になりプラモデルもすべて集めましたが、いま美しく保存しておけば…お宝でしたね。ウルトラQ・ウルトラマングッズも結構持っていましたよ。

 この当時思い出すのは、アメリカからやってきた「逃亡者」「奥さまは魔女」「宇宙家族ロビンソン」と言った実写版ドラマに「ウッドペッカー」「どら猫大将」といったアニメーション。
 迎え撃つわが国産モノは「黄金バット」「ハリマオウ」「七色仮面」「怪人二十面相」など実写ドラマに「マッハGoGoGo」「遊星少年パピー」「宇宙少年ソラン」「エイトマン」「スーパージェッター」「おおかみ少年ケン」など、今でも輝いているように感じるジャパニーズアニメーションですね。久しぶりに古本屋に行ってみたいと思いました。そういや記憶にある鉄腕アトムは、実写版でした。

 僕が小学低学年の頃は街頭テレビを見に公園に行って、プロレスの力道山や相撲中継を大人に交じって見ていました。
 しかも1964年東京オリンピックのおかげで、その前からテレビがわれら民衆まで普及し始めた頃やから物珍しさも手伝って見まくってた気がします。

 1960年代は、マンガがテレビで放送されて実写版からアニメーションに移行する時代だったのではないかと思いますが、昭和30年・1955年生まれの僕は、記憶に残せる年齢でその当時を過ごせたことを光栄に思っています。
 というのも、「時代の移り変わり目」を子どもとして過ごした年代ならではの愉快さを脳と身体に染み込ませてきたのですから。

 お宝といえば、僕の集めていた鉄道グッズも、今なら相当な財産でベンツ1台は買えましたね。一度調べたことがありましたが、鉄道模型ひとつとっても買った値段の「ン倍」になっていましたから驚きです。時代が変われば物の価値も、えらい変わりますからね。
 幸いなのはうちのちびっこたちが鉄道関係にそう興味を示していないことですね。

 手元にはほぼ何も残っていませんが、それも何年かに一度、人生をリセットしてきたので止むを得ません。失うものあれば得るものもあるってことで、ここに書いた失ったものがお金換算の価値だとしたら、得た者はお金で買えないものですから。ありがたいことです。

 1993年、バブル崩壊後なんて今2000万円くらいの価値がついている名車も買い手市場でバカ安でしたよ。

 買い手=欲しい人がいないと価値は下がる市場原理を考えれば、介護福祉士の待遇は市場原理を理屈だけで考えれば高騰してもおかしくありませんが、介護保険事業は介護福祉士でなくてもほぼ運営できる環境にあることや、そもそも公定価格でしか売れない介護保険事業では、介護職員売り手市場とはいえバカ高にはなり得ないってことなんでしょうね。

 コロナの合間に2021介護報酬改定単位を見て、ふと、現実逃避してみたくなりました。ハハハ。

写真

子ども時代の僕