和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男（大起エンゼルヘルプ）がけあサポに登場！
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 （わだ ゆきお）
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』（中央法規）が大ブレイクした。
歳重ねなお盛んな「女子力」は生きる力
小規模多機能型居宅介護の「通いサービス」に来られていたトメさん（仮名）ヨネさん（仮名）イトさん（仮名）の女性三名を送っていく最中のことです。
トメさんはお話し好きで、自分のことをガンガン語られます。
ヨネさんとイトさんは空気を乱さない方々で、女子力の高い方とでも言いましょうか、言葉にはしにくいのですが、とんでもない能力を感じる方々です。
トメさん：ホント、怖いよォ～。あのおじさんが来るんだわ。泥棒に入ってきて私の大事なカバンとか肌着とかネックレスとか食べるものなんか、何でもかんでも盗んでいくだわ。いつかは私のお腹に三本の指を入れてきて、お金がないか調べとるんよ。
ヨネさん：それわぁ～怖いわ。ホント怖いわ。
とものすごい相槌を入れている。
トメさん：こないだは肘を踏まれ、いたくて痛くてしょうがないから整形外科にいったんよ。
ヨネさん：それわぁ、ほんとこーわいねェ、こわいこわい
と否定しない。
イトさん：それはこわい。こわい
と時折合いの手を入れるとまたまた…
ホント、怖いよォ～。あのおじさんが来るんだわ。泥棒が入ってきて私の大事なカバンとか肌着とかネックレスとか食べるものなんか、何でもかんでも盗んでいくだわ。いつかは私のお腹に三本の指を入れてきて、お金がないか調べとるんよ。
と延々と続きます。
ヨネさんもイトさんも決して同姓トメさんの話に絡むことはしないし逆らうことも否定することも、無視することもしません。
車が自宅に着くまでトメさんの話を聞き・合いの手を入れることを何度も繰り返しているのですが、車が着くと、それまでのやりとりは何事もなかったかのように「では」と言って車を降りさっさと帰っていく一連の様子を見ていると、女性のすごさを感じるし、「脳の病気で生活に支障をきたしている状態どこ吹く風」って感じの逞しさに頭が下がります。
介護の仕事をしていると、人間にとって大事なものは、物でも金でも、実は人でもなく、「己の生きる力・生きようとする力」かなと思わされるシーンにたくさん出会いますよね。
写真
穴あき雲…
この年になるまで長いこと空を見上げてきましたが、こんな雲は初めて目にしました。ネット上でもメディアでも取り上げられましたが「穴あき雲」と言うそうです。四国では、この世の終わりかと思わされるほどくっきりの光景だったようですが、なんと東京から水戸に向けて走っていた僕も目にすることができました。
助手席に乗っていた社内同志の八幡君に「カメラ、カメラ、撮れ！」って叫び、「スカイツリーと一緒に写せよ」と注文までつけて撮らせた写真です。とても珍しい雲だそうです。ありがとね、八幡君。
