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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

熱中症での犠牲は人災


 日本列島が燃えていますね。
 写真は、先週東京環状八号線(通称:カンパチ)を走っているときの車載温度計ですが、何と「45度」を指しました。

 仲間に「俺は今アラブに来てる」って45度の写真付きメールを入れたら「和田さんアラブ首長国連邦の気温は37度です」との返信がきました。東京は「中東の国により暑いんや」と驚きましたが、夜になっても35度ですから身体に応えます。

 熱中症で亡くなった方の人数も過去最高とか。
 そんな中、こんな話が飛び込んできました。

 子と同居している玄さん(仮名)、子はお金を理由にエアコンをつけてくれません。複数の介護事業者が玄さんにかかわっていて、子に「このままじゃ熱中症になるからエアコンをつけてあげてください」と言っても上の空。

 あの手この手で熱中症対策を講じようとしますが、そばに居る子にその気がないため、うまくはずもありません。
 とうとう救急車を出動させる事態になり、救急隊員から「こんな暑い部屋、死んでしまうよ」と言われてやっとエアコンを使うようにしてくれましたが、それも束の間。
 事態を重くみた事業者は、地域包括支援センターに「介護放棄事案」として報告することに。

 また子夫婦と同居する留蔵さん(仮名)ですが、留蔵さんが元気なころ、嫁に「電気代がもったいない」と電化製品を使わせなかった恨みをかって、子夫婦から「エアコン」を入れてもらえません。
 また留蔵さん自身も扇風機世代ですから、扇風機は欲しがりますがエアコンを理解しようとはしません。

 さすがにこの暑さですから、かかわっていた専門職からエアコンの使用を子夫婦に求め、さすがに子夫婦も同意してくれましたが、エアコンと扇風機の併用は「電気代がもったいない」と扇風機を取り上げてしまい、留蔵さんにしてみれば「涼具」を取り上げられたから不満たらたらです。
 子夫婦も「人道的に折れてエアコンをつけてやったのに不満を言われて不満たらたら」です。

 熱中症アラートが出されようが、テレビで注意喚起されようが「電気代が払えないからエアコンをつけない・つけてもらえない」とか「扇風機しかわからない世代なのに、電気代がネックとなって扇風機とエアコンの併用をしてもらえない・できない」というような理由で、みすみす熱中症にさせてしまい、救急車で運ばれ、病院で命を落としている・重症化させてしまっている日本の国って、超高齢社会先進国としてどうなのかね。恥ずかしいと思う僕がおかしいのかね。

 聞けば、熱中症の半数以上が高齢者で、その理由の多くが自宅でエアコンを使用していない状態だとか。
 猛烈な暑さは年間でひと月くらいのことですから、要介護状態にある方の自宅の電気代を公費負担しても、見守りの仕組み、救急車の出動、医療費の拠出、コロナとのダブルで医療者の忙殺状態などを考えると、社会的コストとしては差し引きしてお釣りがくるのではないでしょうか。

 二年ほど前、九州電力だったかと思いますが、熱中症予防策として「お年寄り応援プランの割引料金制度」を設けたはずです。これがどれほどの効果を上げているか定かではありませんが、公的支援の仕組みになれば、かなり効果を上げられるのでは。

 この時期になると、自分たちがかかわっている要介護状態にある方だけでも熱中症にならないようにあれこれ手立てを講じるようにしていますが、自宅での生活支援は、家族の意向が優先されてしまいがちで、結果が見えていても「払う金がない」的な言葉の前に、どうにもできない歯がゆさを感じるときがあります。

 けなげなうちの職員たちが、数パーセントの望みさえ捨てずにアイスノンを利用者宅に届けている姿を見聞きすると、国が本腰を入れてくれたら何とかなるにもかかわらず、熱中症で亡くなる人をなくせない先進国にっぽんの現状に凍えてしまいますが、そう思っているのは僕だけではないはずですがね。

追伸

 下の写真は、隅田川を遡上する水上オートバイの軍団で、15隻はいましたかね。うだる暑さの大都会東京でのマリンスポーツですから、ほんと見てるぶんには気持ちよさそうでしたよ。こうやって見てるだけだと川の水の臭いもわかんないし。