和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
暮らしの営みとリスク
眠たくないのに、瞼を誰かに強制的に閉じられてしまうかのように閉じ、いつの間にか眠りこけてしまう自分。
あまりに眠くて、瞼を開けていられなくなり「わかっちゃいるけど、止められない」的に閉じてしまうことは多々ありますが、このたびの経験は自分が自分じゃないようで恐ろしくもありました。
その理由は明白で、先週出現した蕁麻疹(かどうかはまだ確定していないが)に伴う強烈なかゆみを止める薬物による眠気です。
いやぁ、眠剤等でふらつく・ボーっとする高齢者のことが垣間見えた感じでしたが、自分でコントロールしきれないから恐ろしいですね。
かゆみと眠気で集中力がなく、「原稿を書く」とか「何かを考える」といった仕事には全く手が付けられず、ひたすら自宅で大規模な片付けをしては身体を動かし、かゆさを紛らわす日々を送りました。
おかげで自宅は今、ひっちゃか・めっちゃか状態になっています(あっちこっち掘り返してそのままの状態だからです)。
「かゆみ・ボーッとする・眠れない」こととの闘いに暮れたこの一週間でしたが、各地の水害の報道を見聞きしては「大丈夫かい」とメールを打ち、職員の家族に異変が起きたとの報が入れば「大丈夫かい」とメールを打ち、ガス爆発が起こったと聞いては「大丈夫かい」とメール打ちーので、心配されるより心配することに慌ただしい週でもありましたね。
やっと梅雨明けのようですが、これで「ひと安心」とするのは早すぎで、熱帯地方かと思うようなスコール・集中豪雨に要注意です。気を付け合いましょうね。
さて、皆さんもご承知のように、長野県の特養で起きた事故の裁判で、一審の有罪判決が高裁で逆転無罪になりました。
特養入居者がドーナツを食べた直後に体調急変で死亡という事故で、ドーナツを食べさせた職員の過失が問われた裁判ですが、経緯などについてはネットで調べていただくとして、僕がこの判決で嬉しく思ったのは、起きてしまったことは回避できたはずだと「結果回避義務」を重視して責任を負わせる傾向が強い中で、「リスクや状況をきちんと判断して仕事をしていれば死に至るようなことになったとしても刑事責任を問われることがない」ことを見せてくれたことと、「食事にはリスクが伴うが、利用者の喜びや満足度は利用者が生きていくうえで大事だ」とされたことで、これは画期的なことです。
全文を読んでいないのでうかつなことは言えませんが、この判決は「介護現場は人の暮らしの営みの場であって暮らしの優先はリスクゼロありきじゃない」ことから「リスクマネジメントは人権の上に立つものではない」ことまでの流れを生むのでないかと期待がもてるものでした。
皆さん、この判決文は全文読みましょうね。
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新型コロナウイルスの感染が大きく広がった四月、スーパーから消えた物のひとつが「たこ焼の粉」でした。
かろうじて「お好み焼きの粉」はあったとしても、たこ焼きはどこに行っても品切れ。しかも五月はもちろん、六月に入っても品切れが続いていましたが、七月初旬に行ったお店で久方ぶりに見かけました。
僕が感心したのは「名古屋の人もたこ焼きが好きなんや」ってことで、外出自粛・飲食店休業下で求められたのが「たこ焼きの粉」っていうのは、たこ焼きで育った関西人としては誇らしかったです。
ちなみに品切れ商品で気づいたもうひとつは「バター」でした。マーガリンはいっぱいあるのにバターはどこに行っても売り切れていました。どこもお家でケーキ作りだったんでしょうかね。
たこ焼きといいケーキといい、子どもに限らず大人もニコニコしながら作っていたんでしょうから、おうちの中はコロナ幸渦(こうか)だったんでしょう。
もうひとつ話題になった売り切れ商品は、世界的に避妊具だったようですね。コロナ幸渦なら歓迎ですが、こいつには不幸禍もつきまといますから…。