和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
人類の宝・創造性を活かして「より良く」へ
僕ら介護業界にいる者には馴染みがないのではないかと思いますが、一般社団法人ACCという団体が主催する「2019 ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」の「マーケティング エフェクティブネス部門」に「注文をまちがえる料理店」のプロジェクトで応募したところ、なんと「総務大臣賞/ACCグランプリ」を獲得できました。
ACCとは「広告主・制作会社・放送会社を中心に構成される団体で、事業の枠を超え、様々な視点から日本のクリエイティビティの発展に貢献すべく活動している団体」だそうです。 エフェクティブネスとは「効果や成果があったか」という意味だそうです。
6月のカンヌライオンズに引き続き栄えある賞をいただいたのですが、僕らは賞取り屋ではありません。
ACCでは、69作品の中から選考された9作品が最終選考会に残り、選考会場でプレゼンテーションがありました。 僕もコメントしましたが、久々に唇が震え、声が震えるほど緊張しました。 何にそれほどまでの緊張を覚えたかというと、その会場に来ている人たちは、日本のクリエイティビティを引っ張っている方々で、介護福祉士である僕は異質。言い方を変えれば「場違い」とも言える存在です。
残った作品で、高齢者・認知症に関するものは「注文をまちがえる料理店」だけの中で、認知症のこと・社会のありようについて超短く喋ったのですが、注文をまちがえる料理店がなかったら、注文をまちがえる料理店にクリエイターたちが手弁当で想いをもってかかわっていなかったら、世界の方々が注目することがなかったら、寄付を寄せてくれた方々がいなかったら、日本各地で共感して取り組まれた皆さんがいなかったら、ここに出品していなかったら、この場違いとも言えるこの場で異質の僕が認知症のことを語ることはできないし、社会のあり様を語ることはできないし、こんなことは実現できなかったと思うと「感動」が湧き上がってきて、極度に緊張したってことです。
あるクリエイターの方から「注文をまちがえる料理店がこの賞をいただいたことで、そうそうたるクリエイターたちや企業の方々も、高齢者・認知症を確実に意識するようになるだろう」と聞きました。 それがこの先「より良い社会」につながっていくことになるやもしれないかと思うと、わくわくしてきます。
北海道、岩手県、福島県、山形県、群馬県、東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、京都府、兵庫県、岡山県、広島県、高知県、愛媛県、福岡県、熊本県、沖縄県で開催・開催準備されている「注文をまちがえる料理店」(各地で名称はまちまち)は、イギリス、韓国、中国、カナダなど海外でも。今でもひっきりなしに英文で問い合わせがきていますし、僕らのメンバーは台湾から招かれ講演してきました。 連載漫画にもなりましたし、この先驚くような展開も待ち受けている「注文をまちがえる料理店」。
人類の課題である「脳の病気とそれによって引き起こされる認知症」の世界に人類のもつ創造性を存分に発揮し、活かし、僕らなりにほのぼのではありますが「認知症になっても人生をあきらめなさせない社会への灯り」をともし続けて行きたいです。
追伸
感動による緊張状態から解放されたこの夜、飲み過ぎて、スーツの上着をどこかに忘れたようです。翌々日には義歯も忘れちゃいました。忘れるって社会的経済効果ありますよね。己の財布は薄くなりますがね。ハハハ