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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

改めて新年度、新元号決定!平成31年4月1日!


 恐るべしフェースブックである。
 先日ベトナムに行った時、一緒に行った同僚と街中をぶらついていると、「和田さん、この後、ある人に会いたいのですが、ご一緒してもらっていいですか」と打診され「ぜひ」ということで会うことに。その彼は、同僚とフェースブックでつながっている人だが、ベトナムの老人ホームで働いている日本人と聞いたから興味津津である。

 会ったこともない彼と、全く分からない異国の地で、どこかで待ち合わせをしようとしている風でもなく「どうやって会うのかな」と思ったら、これまたすごい武器を駆使していて、携帯端末で自分の位置を相手に送っていた。
 「自分たちが動いても相手にはわかっているので大丈夫です」と言われ、僕はただ「はぁ~」と感心するばかり。

 彼は、日本の有料老人ホームで働いていたそうで、何かのきっかけでイギリスの老人ホームに渡り、そのうち各国の老人ホームに興味がわき、調べて各国の老人ホームに売り込み、たまたまベトナムから「日本人の介護福祉士を必要としている」とオファーを受け、ベトナムへ渡った人で、今は介護技術の指導者として働いている。

 話を聞いているととても楽しい。
 例えば、イギリスでも介護職は不人気職種で外国人労働者に頼っているそうだが、EU離脱問題で外国人が入ってこなくなり社会問題になっているとか。
 しかも、そもそもなんで介護の仕事が不人気かというと、賃金が他業種よりも低いのと、三カ月に1週間の休暇はとれても、バカンス(長期休暇)がとれないからだそうだ。

 あと聞いていて面白かったのは、老人ホームに入居しているAさんの話。
 Aさんは牛乳が大好きで、「何を飲みますか」と聞くと必ず「牛乳」と答える方だとわかっていたので、Aさんに聞かずに牛乳を提供したところマネージャーから、「その都度、Aさんの意思を確認しなさい」と怒られたそうだ。

 これは不合理だと思われる人もいるかもしれないが、Aさんの「歴」を知っているからと言って「今のAさんを過去のAさんに(歴)閉じ込めず、今のAさんの意思を確認しなさい」ということであり、ごもっともな話である。

 彼にしてみれば「ここはそう言われたが、こっちはそうでなくてもいいのかいな」と思える整合性のなさは多々あるようだが、それはそれとして、その人の意思を確認しながら支援することをとても大事にしているところはイギリスかなと思えた。
 この部分は日本の介護の仕組みにおいて極めて弱いところでもあるだけに、もっとこういうことが知れ渡るようになるといい。

 ベトナムは、今のベトナムでは「本当はこうしてあげた方がよい」と思っても、それにお金がかかるとなると断念するしか方法がないようでジレンマがあると。
 まぁ、大なり小なり公的瀬度が整っている「日本でもある話」だが、ベトナムでは杖やオムツなど、ほんの入口あたりで断念せざるを得ないそうだ。

 さて僕もベトナム訪問は四回を数えた。
 桁違いの通貨「ドン」は使い慣れてきたし、「お久しぶりです」とご挨拶できる見慣れた人もできてきたし、見慣れた景色も増えた。

 ベトナムが身近になってきた三年目、いよいよ今年は、第一期外国人技能実習生が僕らの仲間に加わることが決まった。
 ベトナムに初めて行って、理由はどうあれ日本で働きたい若者がいることを知り、それを応援してやりたいと思ってから二年。

 今回渡航目的のひとつは、第一期内定実習生の家庭訪問することだったが、実習生の親や身内にお会いさせていただくことで、環境を整えてしっかり応援せねばと気が引き締まったし、職員さんにきちんと伝えねばと思った。

 今回は、ハノイだけでなくハノイから車で2時間離れた町や、数百キロ離れた町へ国内線で飛び又、そこから車で1時間・2時間離れた村など、実習生の課程訪問でなければ行けない・行かないところに出向くことができたが、ベトナム戦争で悲惨な目にあった国や地域とは思えない豊かさを感じた。人ってたくましいね。

 さぁ四月一日、今日から新年度。
 また平成31年4月1日、今日の昼前には次の元号が発表され次代へ継ぐ節目の日となる。
 僕も、どんな年度にできるかではなく「こんな年度で終えたい」をしっかり掲げて、やってくるベトナムの若者たちに恥ずかしくない逞しさを以て、職員さんたち・仲間たちとあれこれ挑んでいきたい。

写真

 ハノイ駅近くの路線は、写真のように建物密集地の中を鉄道がすり抜けています。
 ここは有名な場所で、建物や自分の真横を列車がすり抜けていくのを体験しに多くの観光客で溢れていましたが、僕が楽しかったのは「鉄道と共に暮らす人々の日常生活」でした。
 線路の中に立ち入らないように!
 安全面から当然のように子供たちに教えていますが、遊ばないように管理する日本よりも、線路の中も子供の遊び場にできているベトナムの方が好きですね。
 もちろん列車が来る頃には大人によって片づけられています。また、列車が来るまではカフェになっている線路端も列車が来るときはわかっていて、瞬時に椅子やテ―ブルは片付けられ、お客さんを両脇に逃がし、通り過ぎると元通りに戻し・戻ります。
 ここは何故か西欧人が多かった印象です。
 次回は列車の中からこの景色を見てみたい。


 まだまだ始まったばかりのベトナムとのお付き合いですから、次への夢も広がります。

平成参拾壱年四月一日
和田行男

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