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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

推進力


 ちびっ子と一緒に風呂に入った時に「塾に行くかい」って聞いたら「いやだ」ってハッキリ。

 「大人になったら何になりたいんや」って聞いたら、「玩具メーカーでオモチャの研究がしたい」って言うので、「なんでオモチャの研究がしたいの」って聞くと、「みんなが楽しく遊べるおもちゃをいっぱい発明したい」って言うので、「そりゃ大変だぁ。しっかり勉強して学校に行かなあかんから、塾には行かんとな」って重ねて言うと「うん」ってうなずいた。

 それからしばらくして連れ合いから送られてきた写メは、夜遅くまで勉強しているチビ。

 「あれ、がんばってるんやなぁ」って返信すると「塾に行きたくないから頑張る!」って言っているのよ。

 なるほどなんだが、よく考えると元は玩具メーカーで研究がしたいから勉強するってことで、そこが推進力である。

 先日、「この先のビジョンは?」って介護職の方に聞いたら「介護福祉士の資格をまずはとって、その後は介護支援専門員の資格をとろうと思っています」と言うので、「なんで介護福祉士の資格がいるの」って聞くと、「お給料が上がるので」と言うので、「なんでお給料を上げたいの」って聞くと、「欲しいものもあるし、結婚も考えているので…」。

 なるほど、だから「仕事の中身云々ではなく、少しでも給料の高いところを目指すんだ」と思ったことと、チビの話が重なって可笑しくなったが、そこはお金が現実的な大人と子どもの違い。

 でも、そもそも介護福祉士の資格がないとできない仕事じゃないのに、国家資格を得たというだけで給与が上がるのは「同一労働・同一賃金」に反するし、制度も動機も介護福祉士の資格をとる理由が「要介護状態にある人のためではない」ところが、この資格の値打ちを下げている気がしないかって、思わず投げかけてしまった。

 それにしても介護保険制度で運営されている介護事業での介護職員給与が、法人種別の違いや事業種別の違いにかかわらず「同じ」だったら、みんなどこで何をやるんだろう、その基準は何なんだろうかと憶測したくなる。

 つまり純粋に「どの制度の元で仕事をしてみたい?」って聞かれるわけだから、「これまで通り特養」もいれば「だったらグループホーム」っていう人もいるだろうが、いずれにしてもそうなると、介護保険制度は介護職の純粋さ・推進力を剥いでしまっているのかもしれないのだ。
 だとしたら、公的制度でどうにでも組み立てようがあるだけに、もったいない限りである。

写真

 寒くなってきたのでぬいぐるみをおんぶして勉強しているチビ。ちなみに翌日は暑いと言って、頭に手ぬぐいを巻いて励んでいたいとか。

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