和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
死が生きた
グループホームでマタマタ火災発生!
仲間からメールで一報を受け取ったときは「大丈夫やった」って犠牲者が出たかどうかを心配してしまった僕だが、今回はこれまで犠牲を出してきた教訓が生きて何とか犠牲者を出さずに済んだようだ。
やっと「死が生きた」と言えるのかも。
平成18年1月、正月気分に浸っていた僕に「和田、グループホームが燃えてる。火災や!」という親友からのメール。
その後も、群馬県の介護施設で、北海道のグループホームで、長崎県のグループホームで火災を出し、犠牲者を出してしまい、同業者として胸が痛む思いをしてきた。
最初の火災時から「スプリンクラーなど消火設備」について、その必要性を語ってきたが、あれから8年後に起こった今回の火災では、その設備(備え)が犠牲者ゼロの結果につながったようでホッとしている。役人たちも僕と同感ではないだろうか。
ただ残念なのは、火災を起こさないための手立てはまだ不十分なようで、今回も入居者の持参品の中に「火の素(ライターやマッチなど)」があったのを見つけ出せなかったことが原因のようだ。
「備えあれば憂いなし」で設備を整えても、それはあくまでも事後の対処方であって、事(火災)を起こさないために手を抜いてはならないのだ。
対岸の火事ではない。
僕のところでも事業所の総点検を指示したが、仲間にも同じことを呼びかけた。
皆さんのところでも改めて点検を!
点検なんて何度やっても「やり過ぎ」はないと心得て、入居者の持ち物、喫煙場所、施設周りの可燃物の状況などの点検をはじめ、防火の自主点検の実施、訓練の実施頻度の改善、防火・消火設備の点検など「鉄は熱いうちに打て」の先人の教えに沿って行動してはどうか。
犠牲者ゼロの次は「火災ゼロ」の達成である。尽力しよう!
写真
「モンキーバナナ」を「しまバナナ」だと思って買う人がいるようだが、「小ぶり」という共通はあったとしてもまったく別物である。
逆に「生と死」は対極のように思われがちだが一体ではないかと僕は考えている。
先の死を生かしたからこそ生きのびることができた今回の火災。先人の死を生かしたからこそ大津波の犠牲にならなかった人たち。歴史にみる死を生かそうとするから憲法九条を守るために行動する人たち。
「死」をつきつめればこそ「生」が見えてくるのかもね。