和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
わかんないところにやりがいがある
認知症はそれそのものが病気ではなく「疾患に伴う状態」ですが、原因となる疾患について様々に研究や調査がされているようです。
僕は研修会では、認知症の状態にある人の推計数は、国の一昨年の発表で462万、そのうち脳の変性疾患約80%(アルツハイマー60%・レビー小体15%、その他)、脳血管性疾患約15%、その他約5%で、この数字は変動していますと伝えてきましたが、ある調査研究によると、アルツハイマー36%、レビー小体4%、脳卒中29%で、アルツハイマー+脳卒中10%、アルツハイマー+レビー小体6%、脳卒中+レビー小体3%、その他12%の割合だったと最近の雑誌で読みました。
つまり5人に1人の割合で重複疾患によって認知症が起こっているということですが、なかなか複雑なんですね。
しかも暮らしの場面で起こる現象はそれらの疾患に起因するだけではなく、その他の精神科系疾患なども絡み合っているでしょうから、その方々の支援となるとさらに複雑さを増すってことになります。
僕は、認知症の原因疾患を突き詰めること先にありきでは考えていません。たまに、医師でもない方が「この原因疾患の方にはこういうケアを」という記事を目にしますが、この調査のように原因疾患が重複していたり、そもそも、医師の診断が正しいかどうかが曖昧となると、それもおかしな話ですからね。
原因疾患がどうあれ、起こっていることに対して何が必要か・できるかを突き詰めていくだけですが、どう考えても「?」の時は、医師の診断を頼ります。
とめさん(仮名)は、僕が関わる前、他の入居者や職員に手が出る状態になったということで精神病院に送りこまれましたが、僕に子から相談をいただいたので、ある有料老人ホームへ急遽入居していただくことにしました。
職員たちは、あれこれ手立てを講じましたが手を上げることは治まらず、僕が信頼する医師の診断を仰ぐことにしましたが、それでわかったことは、「確定的な事は言えないが脳のこの部分の病変が影響しているのだろう」ということで、治療策はなく、薬物で抑え込むしかないというものでした。
つまり、何のために受診させたかと言うと、この方の粗暴な言動の理由は「病によるもの」ということを知ることで、職員の関わりに課題があるわけではないことを職員に知ってもらうためです。
ともすると「自分のかかわりが悪いからこうなる」と燃え尽きる職員が現れたりします。一生懸命真正面から取り組もうとする職員に限って、そうなりかねません。
結果的には、薬物で完全に抑え込む道をとらず看取りましたが、「どうにもならない時は薬物で抑え込んでもいいんだよ」という道が見えないときついですからね。
脳に起因する疾患が原因となる認知症。
元は、そもそも未解明な脳ですから、僕になんて「わかんないことだらけ」ですが、だから面白いんですよね、やり甲斐があるんですよね、人間に関わる仕事って。
写真
のど元過ぎれば何とかやらですが、時々こうして思い返してみませんか。
写真は、家電製品の不具合から火災を起こしたグループホームの報道の様子ですが、うちもこのときは家電製品で「リコールのかかった物」を調べまくりましたが…
この記事を読まれた方は、早速調べてみましょうね。この写真のようなことにならないうちに。