和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
精を出す
自分が自分のために精を出す・精を尽くすということは儘あるが、「誰かのため」とか「何かのため」といったことを意識することが日常生活の中で少なくなってきた。
その意味で「お祭り」は、「自分以外のため」に精を出しきる・尽くしきる出来事としてはわかりやすいが、そのお祭りさえも地域住民に密着しているかといえば、そうとも言い切れなくなってきているのではないか。
沖縄県で「ハーリー(安全祈願、豊漁の祭り)」に出くわした。見に行ったわけではなく、タマタマである。
ハーリーを見ていて思ったのは、僕らの仕事と同じだということ。
まずは船を漕ぎ出すのだが、漕ぎ出すときのチームワークがひとしきり重要に見えた。
水しぶきの違いでチームがわかる。
僕らの仕事も同じで、施設を開設するときのチームづくりが一番の肝になる。スタートがスムーズでなければ、後が苦しくなる。
ただ、スタートがスムーズでなければどうにもならないかといえば、案外そうでもなく、取り返しがつくものだ。
ハーリーを見ていてもそうで、距離がそれを可能にしてくれているし、ハーリーでは「転覆」というルールが、より取り返しを可能にする。
転覆というのは、競技中にわざと船を転覆させ、もう一度その場で乗りなおして漕ぎ出すというものだが、これでもたつくと逆転されてしまう。
元は、船で遠洋に出て漁をして暮らしていた人たちの知恵で、嵐に巻き込まれたらわざと船を転覆させ嵐の静まるのを待つ知恵だったようだ。
施設開設で、わざと「沈黙すること」はあったとしても沈没させることはしないが、沈没しかかったとしても、もう一度うまく乗り直しできればスムーズに再スタートをきることができ、逆転さえできるということだ。
いずれにしても大事なことは、一人ひとりが精いっぱい力を出すことであり、それぞれが精を尽くすだけではダメで、チームとして機能しなければ、求める結果は生まれないということだ。
ハーリー以外にも「精を出す・出し尽くすチームの姿」に出会えた。
僕と連れ合いが最近はまっている「き○やま商店」という石垣島出身のバンドがあるが、なんとハーリー打ち上げ会場でライブをやる情報をつかみ、見に行った。
たった三人、されど三人。精いっぱい魅せてくれるライブに精も根も尽き果てたぁ。ハハハ
ひとは「一生懸命」に心が動く生きものやね。