和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
68歳の彼! ありがとう
ある仲間の法人研修会に招いてもらった。
その法人は、グループホーム、デイサービス、居宅を運営しているのだが、全体研修会ということで各事業所から集まっていた。
内容は、事前に職員の皆さんから質問を受け、それに沿って進めるという「僕の大好きな形態」で、全体で30問近く上がってきた。
身内だけの研修会ということもあり、利用者・入居者の個別支援策についての質問が主だったが、ひときわ目に留まったのは、グループホームに所属する職員からの次の質問(?)だ。
入社して6年目に入りました。
まだ介護技術が未熟で、自分なりの方法や個人の判断で介護を行い、間違っていることが多くあります。その都度他のスタッフから教えを受けている現在です。
認知症の利用者様が持っている能力や可能性を引き出す考えが、(自分は)他のスタッフより劣っていると思います。今後の介護の仕方を和田さんの講義で学びたいと思います。
6年目の職員の言葉としては謙虚で、自分が感じている「我が課題」を明らかにできており、それを何とか「より良くしていきたい」と、追求の姿勢をしっかり述べている。
この方は68歳で、60歳から介護の仕事をされてきたようだから恐れ入る。
人はとかく年齢や立場に関係なく「できているつもり」になり、他のスタッフから教えを請うなんていう積極性も謙虚さも薄れ、自分の課題が何かを突き詰めて、それをクリアしていこうという姿勢が薄れがち。
僕の関係するグループホームの若きリーダーに「自分の到達点をどうやって量っているんや。俺でよかったら1日付き添うよ」って伝えたが回答なしであった。
68歳のこの方の「姿勢」を僕自身学ばねばですし、うちの職員たちにも伝えねばです。
また、この法人の職員たちの質問の多くは「こういう状態の方に対してこうしているが、和田さんはどう思うか」であったことがステキだった。
とかく「こんな大変な状態があって困っている、どうすればいいか」というように、認知症という状態に見られる現象を問題化して、思考も試行もすることなく「自分たちが困っている・大変さ」を訴えがちだが、婆さんの言動を問題化するのではなく、まずは受け止めて、その上で思考して、手立てを試行し、そこから学んで次に活かそうとする職員集団になっているように感じられた。
事業所のリーダーに「変わってきたよね」と経営者が声をかけると「変えてきました」と頼もしい言葉を返していたが、職員集団の真ん中にリーダーが「デン!」と構えて、そのリーダーも謙虚さと課題に挑む心意気のある人だからなんだろうなぁと思えた。
僕のボスは常々「より良く」という言葉を役員・職員に投げかけているが、とても重要な姿勢を表した言葉であり、「より良く」の姿勢があるかどうかは全て利用者・入居者に跳ね返るだけに、これで飯を食わせてもらっている専門職として、肝に銘じてプロフェッショナルな仕事をしなくてはと改めて思えたひとときであった。
68歳の彼! ありがとう
追伸
新しい年度を迎えました。
毎年書かせてもらっていますが、学校を卒業してすぐに介護業界へ来てくれた新卒者たちを迎え入れている事業者・事業所は、絶対数は少ないとは思いますが、あることでしょう。
僕のボスの言葉じゃないですが、この先何十年にわたって履歴書の一番最初に書かれる事業者(法人)として、その責務を果たさねばです。
写真
自然と人工物(カメラ機能付き携帯電話)のコラボレーションによる「作品」ですが、これも少し角度を変えると「こう」はなりません。
僕らの仕事も同じで、自分を同じところにおいておくだけでは「うまくいかない」もので、少しずつ角度を変えながら婆さんに接することが大事なのです。
遊園地で一番苦手なのが、コイツ、観覧車。
先日もちびっこ3号から「乗りたい」ってせがまれましたが、「怖いからダメ」って拒みました。
先日も鳴り物入りでスタートしたある遊園地のジェットコースターが緊急停止し、地上30mで15分間停止したとか。
高所恐怖症の僕としては、それを考えるだけでケツの穴がムズムズしますもんね。
観覧車は下からこうして観覧するのが一番ですよ!