和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
施錠するも施錠しないも正しくはない
グループホームの管理者の方から質問が寄せられました。
「早朝4時半過ぎにグループホームの入居者がいなくなり、5時40分に自分が見つけました。
職員には再三注意をするように伝え、玄関にチャイムを付けていましたが、それでも起こった出来事です。
緊急に職員を集めて、対策として「職員の意識を高めること」と「業務の見直し」を話したいと考えますが、アドバイスをお願いします。」
まずは、一人勤務時間帯は玄関を施錠することを薦めます。気持ちは理解できても無理があります。
つまり、どんなことでも「できること」と「できないこと」があると判断していくのですが、夜中一人勤務のときに「自由に外に出られるようにする」を支援するのは「できないこと」に位置づけるということです。
職員の支援力(個々の能力ではなく仕組みとしての支援力)を補完する道具として、出入りの状況がわかるチャイムを取り付けますが、あくまでも補完装置。
ですから「二人以上の職員が配置されている勤務時間帯は施錠しない」とした場合でも、どうにも自分たちの支援力が足りないと判断できたときや判断したとき、その状況下では「施錠することもやむなし」と判断して対処できる裁量権を職員さんたちに渡してやることです。
まとめると
- ○ 基本は「人が人の意思に反するかのように閉じ込めること」は、人が生きることを支援する考え方の中では人権侵害と捉える。だから少しでも閉じ込めないようにする、閉じ込めた場合でも「申し訳ない」と婆さんに対して思う思考をもてるようにする。
- ○ その上で「日本の支援策」の到達点(一人勤務が不可避)から鑑みて『施錠やむなし』はお互いに認め合う。
- ○ 自分の自分たちの支援策の到達点(ベテラン二人勤務と新人二人勤務では違うはずでしょ)を引き上げるために尽力しあう。
ということではないでしょうか。
とかく教条的に「施錠はおかしい」という議論や実践になりがちですが、僕らの仕事はほとんどのことを「基本と到達点」で進めていくしかないわけですから、基本(原理原則)を確認し、それを「ものさし」にして到達点をはかり、自問自答しながら実践することが不可欠ではなしでしょうか。
施錠するも・施錠しないも、現状では正しくはないということなんでしょね。
追伸
「早速、緊急会議をやって改めて支援策を話し合いました。
それと、もしも見当たらない時の対応策として考えておくべきことをお聞かせください。」
と追加で質問がきました。
見当たらないことが判明した時点で、
- ○ 最終確認時間が10分を超えていたら即時警察と家族に連絡。
- ○ 10分以内なら捜索に出て、10分を超えても手探り状態なら警察と家族に連絡。
※普段から10分でどれくらいの距離を歩けるかは人にもよりますので、10分でどれくらいのところまで歩けるかを知っておく。また、玄関を出たら、その後どちらの方向に歩く確率が高いかを把握しておく。 - ○ 事前に、入居者の情報をA4一枚に写真付きでまとめておき、ファックスや貼り出し、配布できるようにしておく。
※女性の場合は、旧姓も記載。 - ○ ときどき、本人に「お名前は」「どちらにお住まいですか」「子どもさんのお名前は」といったように、他人から聞かれやすい事柄についてどう答えられるかを把握しておく。
※警察官に「お名前は」と聞かれて本人が旧姓を答えられたので、警察官が出会って会話をしたにもかかわらず、その後の対応ができなかった例があります。
写真
新幹線の車中から撮った富士山ですが、とても世界遺産とは思えない「富士山光景」ですよね。僕は好きですがね。