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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

ロトシックス


 最近聞かなくなった「自分を主張できる団塊の世代が高齢者になったら、今までのように事は運べないよ」という言い方。
 つまり「介護側の事情で思うようにできたことも、これからの時代では、そうはいかなくなるよ」ってことなんやろうけど、時の流れとともに「高齢者=65歳以上」は変わらなくとも「生きてきた環境」は変わり、環境が変われば、当然あれこれ違ってくるものだ。

 僕がこの業界に入ったのは昭和62年1987年。
 当時の80歳以上といえば「明治生まれ」で、明治・大正・昭和を生き、働き盛りが終戦からの復興期にあたる。
 僕の入った翌年が昭和の終わり・平成の幕開けだが、その平成ももう27年になる。

 御年84歳のゲンさん(仮名)は、ある地域で、ある小規模多機能型居宅介護事業所を利用している。

 もちろん自宅を拠点にして一人暮らしをしているが、介護認定で「要支援2」が出たので、周りの勧めもあって介護事業を利用するようになった。

 ゲンさんは「宵越しの金はもたないタイプ」で、手元にあればあるだけ使うし、なければ無いなりの生活にとどめられる人で、昭和一桁生まれの「昔かたぎの人」である。

 ひとりで出かけることも多々あるが、道に迷ったりはするものの何とか自宅に辿り着いてはいる状態で、それもこれも長きにわたって同じ地域・同じアパートに暮らし続けているおかげである。

 そのゲンさんが小規模多機能型居宅介護の通いサービス利用中に見当たらなくなった。

 結果的には再会を果たすのだが、なんとゲンさんの行先地は「ロト6販売所」だったのだ。

 ちなみに「ロト6(ロトシックス)」とは宝くじの一種で、2000年販売開始。ゲンさんが69歳の時だから、ゲンさんに「ロト6歴」があってもおかしくはない。

 この話を聞いて思ったことは、僕がこの事業所で働いていて、利用者=高齢者が見当たらなくなったとき、事前の情報があれば別だが、「ロトシックスを買いに行っているかもしれない」なんて思い描けただろうかと。

 うちの事業所の近くにあるものを描くと、喫茶店、カラオケ場、居酒屋、雀荘、囲碁道場などがあるが、これらなら「高齢者が行きそうな処」と描けるし、覗きに行くかもしれないが、高齢者が行きそうな処=ロトシックス販売所は描けなかっただろうなと。

 それが今日のブログの本題なのだが、時代の移り変わりとともに環境が変わり、環境が変わるとともに生きる人々の暮らし様も変わる。

 僕が入った頃の高齢者は、カップ麺さえもなじみのない世代だったが、今の高齢者は「スマホでライン」をいとも簡単に使いこなす人たち。

 「大逆転の痴呆ケア」という本を出版した直後によく「和田さんはなぜ、グループホームでの調理にこだわるのですか」と聞かれたが、「今の宇宙食が日常化した時代を生きてきた人たちを支援する時代なら、調理をするなんて考えもしないでしょうね」と答えていたことを思い出した。

 ロトシックスも同じことなんだが、自分の暮らしの中にないことって、なかなか思い描けないもんやね。

 僕が雑誌をよく見るようにしているのは「時代」を目にするため・感じるためなのだが、もうひとつは「知らない世界をのぞき見する」ためでもある。

 もっともっと貪欲に「暮らしの営み」についてアンテナを高くしないと、「昔の高齢者像では応じられない」ことを、改めてゲンさんのロトシックスがノックしてくれた。

写真

 よーく見ると、むごい写真。
 大きなトンボが自動車に頭から突っ込んだものです。
 高速道路を走れば当たり前のように小さな虫がクルマに激突しますし、北海道ではものすごい数のバッタが激突して、とんでもない状態になったりしますので、特段珍しいわけではありませんが、この写真のように大きなトンボが頭から激突死して、そのままの状態で数百キロも走ってきたのを見たというのは初めての経験で、虫でもバッタでも同じはずなんでしょうが、トンボだと印象も感覚も違うもんですね。
 大きさなんでしょうか、「トンボのメガネは」なんて子供のころから歌ってきたから持ち合わせている哀愁度なんでしょうかね。
 ちなみにこれは友人のクルマで、700キロの道中のどこかで激突したトンボです。