和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
まだ見ぬ介護者へ2024
私はすべてを失ったわけではありません
どんなことでも まず問いかけてみてください
何でも まず私の意思を確認してください
食べる 食べない 行く 行かない 暑い 暑くない
どうしたのって聞いてみてください
訳のわからないことを言うかもしれませんが
私は認知症です
察して下さい よーく見ていてください
私はすべてを失ったわけではありません
まだまだ若いものに負けないこともたくさんあります
あると思います
でも 若い頃と同じようにはできないでしょう
あせらさないでじっと見ていて下さい
見ていて少しだけ手を貸して下さい
人間の機能や能力は使わないと使えなくなると
若い頃に聞きました
生きるためにたたかう力はまだまだ……
私はすべてを失ったわけではありません
外にだって自由に出たがるでしょう
雲や星が大好きです
外に自由に出られるようにしていてくれさえすれば
自分で出かけます
でもきっと目的地には着けないでしょう
戻れなくなるでしょう
そっとついてきてくれると嬉しいです
とまどったり不安げになったら そっと傍に来て
どうしたのって声をかけてください
きっとあなたのことが天使様に見えるでしょう
私のことを笑ってくれていいですよ
きっとおかしなことを言ったり
おかしな格好をすることでしょう
でもお願いです
陰で笑ったり 自分一人だけで仲間同士だけで笑わないで
私にも笑っている訳を教えてください
きっと私も笑いの仲間に入りいっしょにおかしむでしょう
だっておかしいことはおかしいって私にもわかるから
私はすべてを失ったわけではありません
認知症の和田さんになったのではなく
和田さんに認知症がくっついただけなんです
私のことをわがままなんて言わないでください
私はあなたと同じ人間です
ただ認知症という難しい状態になっただけです
私の努力ではとめられないんです
この詩(うた)の原文は、2001年頃ある研修会昼休みに弁当を食べている最中、講師で来られていた認知症介護研究・研修東京センターの方から「和田さん、いつも話していることをもっとわかりやすく伝えられる文章を書きなよ」って言われ、弁当を食べながら書いたもので、2003年に初めて書かせていただき世に出させてもらった著書『大逆転の痴呆ケア』の冒頭に掲載していただいたものです。
以前から「痴呆・痴呆症」を「時代に合わせて認知症に変えて出してください」とリクエストいただいていたので少々いじってみましたが、いじり方が良くないのか、僕的には世に問う意味で謳った詩なので「痴呆・痴呆症」の方がストレートでしっくりきますが、これからも僕ともども可愛がってください。よろしくお願いします。
どこかでお会いしたら気軽にお声掛けいただければ嬉しいです。
写真
僕の著書『大逆転の痴呆ケア』がひっくり返る時代の足音を感じています。
和田さん、読者の皆さん、17年間ありがとうございまいた。