和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
生み出すは「挑み」
今回の介護保険制度改定で「生産性推進体制加算」が新たに創設され、介護ソフト、見守りセンサー、インカムの導入などが加算の対象要件として組み込まれてきました。
デジタル化の流れは人類が生み出した人類の流れであり、こうした新しい物に対応していくことは避けて通れないでしょう。
僕が学生の頃の電話機は、固定電話でダイヤル式が残っていて、その後固定電話でプッシュ式(プッシュホン)にすべて変わっていきましたが、「ダイヤルを回す」から「ボタンを押す」程度の変化なので、まったく違和感なく使えました。
その後、携帯電話のガラ軽が出ましたが、それもボタンを押す方式なので、そんなに戸惑いはありませんでした。
ところが、世はスマートフォン時代に移り変わり、こいつは「それまでとは激変」ですから、なかなか厄介です。
ただ、僕の場合はスマートフォンに変える前にiPadを使っていたので、何とかなりはしましたが「指を使ってシュッシュッ」に、いまだに戸惑いは隠せませんし、やっぱりガラ携と同じように打ち込んでしまいますね。
僕が介護の仕事に就いたころ、記録は手書き。その後、固定式のパソコン、携帯できるワープロという機器が誕生してきました。もちろん初めて使うものですから、かなり手間取りましたが、それも慣れていきました。
手書きから打ち込みに変わった当初、職員さんたちは、「手書きのほうが早い」なんて言っていましたが、やがては「時間短縮」につながり、今、パソコンでやっていることを手書き・手計算だけでやろうと思えば、それのほうが大変で「もう後には戻れない」のではないでしょうか。
それはスマートフォンも同じですし、世の中には使っていくうちに違和感がなくなり、むしろ便利になったと感じているということやモノは、たくさんあるでしょう。
そういう視点から見て思うことがあります。
例えば、介護ソフトの導入は日本中でかなりの勢いで進んできている印象をもっていますが、介護ソフトを導入しても「使い慣れないから今までと同じようにしている」なんていう話を聞きます。
面接時に介護ソフトを組み込んだ携帯用パソコンを持参できるようになったのに、今まで通り利用者側の話を聞きながら手書きで記録し、手書きした記録を事務所に戻って入力しているなんていうのもそうです。
理由を聞くと「打ち込みに手間取ってしまっては利用者にご迷惑がかかるから」「失礼だから」というのですが、利用者側に面接前「国が進めるデジタル化の中で介護従事者の負担軽減、時間の生み出しなど効率化のために介護ソフトを導入しました。ただ、自分はまだ不慣れなので時間がかかってしまいご迷惑をおかけしますが、入力しながらお話を聞かせていただいてよいでしょうか」と言えば「ダメだ」という方は、そういないのではないでしょうか。
聞き取ったことを手書きし、手書きしたことを入力するよりも直接入力することで使い慣れてくれば結果時間短縮できるでしょう。
でも、使い慣れないモノに挑もうとしないのでは「もう後には戻れない地点」にはいけないでしょうし、お金をかけた分は無駄になるばかりか、得られる時間も得られないし、手書きしたものを入力することを時間外勤務にしてしまっていたら、お金も時間も負担軽減策も大きな無駄になってしまいます。
挑みこそ「生み出し」の入口で、大上段から考えれば人類はずっと新しいコト・モノに挑んできて今に至っていますからね。
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ノラ猫さんたちも春の陽気を謳歌していました。気持ちよさそう