和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
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高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
市民の言葉に積み上がり感あり
昨年、ある町で開催された講演会にお招きいただいた折、たくさんの質問が寄せられましたが、それに応えきれませんでした。そこで、5か月後にはなりましたが、改めて「質問に応える会」を開催していただくことになり参加してきました。
本番は400名ほどの市民が来てくださいましたが、今回は150名ほど。それでも5人に2人が来てくださったということですから、すごいことです。
質問の内容は、認知症の予防、診断、治療など医療に関することから、免許証を返上せざるを得ないが交通手段がなくなるといった行政への要望、対応の仕方、感想など幅広いものでした。
「認知症を自分のこととして考えようということと、自分はなりたくないと思っている。この感情の整合性をどう考えるか、お考えを聞かせてほしい」
これは、今までにない質問でした。
僕が答えたのは、認知症は「疾患によって引き起こされた生活に支障をきたした状態」ですが、そこから紐解けば、疾患の当事者は本人だけだとしても、生活に支障をきたした状態で影響を受けているのは本人だけではなく、身近にいる家族だけでもなく、仕事場でも地域社会でも影響を受けている方がたくさんいて、認知症施策に多額の税が使用されていることを思えば、納税者はみんな当事者ともいえます。
つまり「認知症になりたくない」と思っている人も「認知症においては当事者」ですから「自分のこととして考えよう」というのは当たり前の呼びかけだということです。
頼もしいと思えた感想も寄せられました。
「数人で井戸端会議をしたのですが、この地域だからこそできることで、近所の人と雑談することが大切だと思いましたし、この年齢になると、人のことを気にしたり・されることが大切だと思いました。転んだ時ついキョロキョロしてしまいますが、若いころは他人に見られていないかと恥ずかしい気持ちでしたが、今は誰かに見てほしいと思うようになりました」
また、「家に一人で閉じこもらないようにし、人とのお付き合いも密にし、雑談でもいいから話をする。自分が認知症になった時のことを考えて家庭内環境を整えておこうと思いました」に代表されるように「こうあらねばならない」と思い込みすぎている感想も寄せられ、逆に心配になっています。
物忘れを心配する声も聞かれましたが、皆さん、自分の年齢を考えることなく「若いころと同じ自分」だと思い込んでいる節もあり、「若いころと同じじゃない君は普通なんだと自分に言ってあげてください」とお伝えしておきました。
いずれにしても、この講演会主催者は20年間、この町で年一度の認知症市民講演会を開催し、それ以外にも町内の単位で認知症の講座や市民相談会を積み上げてきましたので、市民の認知症への関心は高く、市民同士の助けあいも20年前とは比較にならない地域になってきていますが、それでも「カミングアウトして皆さんで支え合おう」と周りが動こうとしても本人や家族の踏ん切りがつかずうまくいかない現実もあります。
ただ、僕自身20年間かかわらせていただいて思うのは、確実に「認知症、わがこと」として考え行動する方が増えていますし、講演会参加者の質問内容も「ならないためにはどうしたらいいか」の一色だったのが「なっても大丈夫な地域づくりはどうしたらいいか」など前を向いた多色になってきましたからね。確実に積みあがってきている感がもてます。地道にやることが急がば廻れ・即効性はないけど特効薬なんでしょうね。
追伸
今日は2月29日。2月29日生まれの人にとっては、4年に一度しか味わえない「ホントのお誕生日に開いてもらうお誕生日会」の日でもありますが、うるう年に必ず思うのは介護事業所でよくある「この月に生まれた方の誕生会」で、月に生まれた方まとめての誕生会ではなく、その人の誕生日に贈る「誕生日会」を開いてあげて欲しいもんです。
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ステキな足跡を残せる時間を過ごさねばです。