和田行男の婆さんとともに
「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。
- プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)
-
高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。
通所介護で「生活の具体が継続できる」ように
新年早々、知人の通所介護事業所管理者さんから「和田さん、聞いてくださいよ」とメールが届きました。
その通所介護事業所を利用することになったガンさん(仮名:認知症の状態にある)のことでした。
ガンさんは、火曜日・木曜日・土曜日の隔日利用予定者で、計画通り木曜日(初回)にお迎えに行き事業所に来ていただいたのですが、到着するなり「わしは行くところがあるので帰る」と言い出したようで、事情を聴くと「今日は友達と喫茶店で会う日なんじゃ」とのこと。
ガンさんの自宅は事業所のすぐ近くで、その喫茶店も事業所の近くです。
管理者さんは、半信半疑ではありましたが、事実を確かめるためにも喫茶店に付いて行くと、お話の通りガンさんのお友達数名が来ていて、ガンさんが来るのを待っていてくれました。
お友達によると、ずいぶん以前からの近隣づきあいのお友達で、週二回喫茶店で会うことにしているそうで、朝早くに来てモーニング珈琲を食して解散するそうです。
管理者さんは、「この集まりは大事だ」と思い、すぐに介護支援専門員に連絡を入れたのですが「あら、そうなんですか」と初耳のようでした。
管理者さんにすれば「介護支援専門員なら、いつもどのように過ごしているのか聞き取るはずなのに…」の疑問が残りましたが言えるはずもなく、僕に「ちょっと聞いてください」のメールとなったようです。
通所介護事業に通いだしたがために、それまで行っていた喫茶店に行かなくなり、それまでの人の関係が切れたのでは「自立した日常生活を営むことができるように」を謳う介護保険制度の目的に照らして本末転倒になってしまいます。
同じように、銭湯のオヤジさんが「デイサービスっていうやつが増えてそこで風呂に入れるから来なくなったお客さんがたくさんいる」と嘆いていましたが、介護保険事業所が増えることで社会資源を食ってしまっては元も子もない話です。
その意味でも、通所介護事業が「それまでの暮らしを継続することができるように支援できる事業」になることが必要で、例えば、通所介護事業所に行っている時間帯に職員さんの支援を得て、日常生活の中で通いなれた理美容院に行ける、商店に買い物に行ける、銭湯に入れるなど生活の具体が実現できる事業になればいいと考え、ブログでも繰り返し発信していますが…。
今月中には、介護報酬額も含めて介護保険制度改定の中身がオープンになるのではないかと思いますが、介護事業者が介護保険制度の目的への実践を遂行していきやすい仕組みになることを願ってやみません。
写真
事業所が所在する町内会のお祭りが久しぶりに開催され、利用者・入居者と一緒に参加してきました。
大勢の町民が参加された賑わいのある取り組みで、正直その盛会ぶりに驚きました。皆さん、コロナで失せた中、欲していたんでしょうかね。
利用者さん・入居者さんたちも餅つきに参加し、大ビンゴ大会にも参加。何をやっているのかわからないなりに、職員さんの支援を受けて細かい作業に目を細めながら、札を一生懸命起こしていたのが印象的でした。ビンゴが人生初体験の方も結構いたのではないでしょうかね。