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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

カッパーズ

 七年ぶりに仙台で、カッパーズという北海道の介護関係者たちと組んでいるバンドの一員として「トークライブ(歌と語り)」を行わせていただきました。
 嵐の中、来てくださった皆さん、道中のみならずライブハウス内も嵐にさらせてしまいましたが、本当にありがとうございました。

 東京から久し振りに東北新幹線で移動。目が覚めた仙台駅手前から土砂降りの雨になり「またかぁ、傘忘れた」と嫌な予感がしましたが、ホテルまではかろうじて小雨で済み「大したことないな」と思っていたら、仙台はあちこち冠水するほどの雷雨だったようです。

 トークライブ当日は、さらにひどくなり朝から土砂降りの雨。電車が止まるほどの状況で、周りからは「和田さんだからね」と言われまくりました。

 今回のライブは、第一部はカッパーズメンバーの「感謝還暦ライブ」(写真はリハーサルの様子です)、第二部は僕と認知症介護研究・研修センター研究部長との対談&僕と認知症の状態にある本人との対談、第三部が僕を加えてカッパーズのライブという構成でしたが、第一部の演奏途中に電源が落ちてしまうという「嵐」が起こりました。落雷などによる地域が停電ではなく、ライブハウスだけの停電。

 ライブハウスでも初めてのことのようですが、僕のボスから「和田さん、やりすぎ(嵐を吹かせすぎ)」と言われましたが(笑うしかない)、なぜか僕も申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたね。急遽、全体の構成を変え、非常電源のライトのみ、マイクなしの地声で対談を行うことにしました。

 僕が認知症の状態にある方と一緒に舞台にあがって催し物をやらせてもらったのは、介護の仕事に就いた1987年直後の敬老会で、特養入所者と一緒に漫才をやらせてもらったのが最初。
 その後、2003年、『大逆転の痴呆ケア』出版後、渋谷で数回にわたって開催した「トークライブ(この時は歌なし)」の中で、認知症の状態にある方・その配偶者と一緒にトークショーをやらせていただきました。舞台上でズケズケ喋る僕にご本人が「あなた、下品で嫌い」って言われたことが思い出です。

 その後も一度か二度やらせていただきましたが、今回はご本人と二人だけの対談で、これは僕にとって又、違うコースをスタートできた感じがしています。

 対談でつないでいる間に、電気工事のプロが到着。流石です、修理完了となり、見事に舞台上の照明が灯されました。
 僕の仕事もこうでなくっちゃいけないと改めて思わされました。困っていることを速やかに解決する。その専門職ですからね。

 電源が回復したことを主催者・カッパーズの面々と喜び合い、第一部の残り曲、第三部のライブ演奏をやりきり、初めてアンコールを受け、「楽しそうで、よかったよ」「元気をいただきました」「歌がうまくなったんじゃないの」と皆さんから声をかけていただきました。
 又、ライブハウスの方から「久しぶりにおじさんたちの愉しそうなバンド演奏を聞いた」「上手い下手じゃない、楽しめていることが一番」「来年もやりましょうよ」と最高のお褒め言葉をいただき、すっかりその気になっている僕らです。

 演奏曲の歌詞に「生きていればいいこともある、生きていればときにやなこともあるさ。だけど君は知っているんだ、道の途中、振り向けばそこに残る足跡」という一節がありますが、カッパーズも結成から10年が経ち、僕を含めてメンバー3人が還暦を越え、長い道を歩んできた分、いろいろなことがありました。
 七年前の仙台トークライブの時はメンバーの一人が癌に侵され舞台に立てませんでしたからね(今回は元気に参加できました)。これから先もいろいろあることでしょうが、それもこれも生きていればこそ。

 今回のトークライブでは、メンバーに起こるいろいろなことや認知症の状態にある本人の話からも「生きていればいろいろあるさ」を改めて感じましたし、その「いろいろを一人で抱え込まないでいいんだよ」と思えました。自分で言うのも変ですが「いい会でした」よ。

 カッパーズのこの先10年、これまでの10年を受けて「どうありたいか」を話し合う合宿をやらねばです。
 残り時間を考えると、ずるずる続けてやっていては僕にとってはもったいない時間になってしまいますからね。

追伸

 トークライブ当日の天気図ですが、僕がいる仙台、狙い撃ちされていましたね。真っ赤!

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