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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

人権を侵す・護る複雑「カメラ」

 厚生労働省の補助事業として調査された結果が新聞報道されました(中日新聞2023年7月21日夕刊)が、介護施設で「見守りカメラ」の導入が進められているようです。
 報道によると2019年度~2021年度に自治体の補助金を活用してセンサーなどの見守り機器を購入したのは2872施設とありましたので、少なくともそれだけ増えたということです。

 このうち約1000施設で「効果や課題について」の調査が行われたようです。
 調査で「事故検証に非常に効果がある」と回答した事業所が55%とありました。
 職員の目の届かない場所における事故等の検証に「カメラ」は断然効果的で、検証ができれば対策は講じやすくなり、効果的な対策を講じることができれば再発防止確率は上がり、結果入居者の生活にプラスになるわけですから、これを考えれば配備したくなります。

 また、「プライバシーの問題を課題」とした回答が28%とありました。
 コミュニティ空間である廊下やリビングのみならず、私的私有空間である居室でカメラが常時作動しているわけですから、入居者の生活は丸裸にされています。
 これは明らかに人権侵害で、逆に28%しか課題にしていないことに介護業界の課題があるとさえ思ってしまいます。

 僕は、この調査結果を知って思ったのは、報道の中では触れられていなかったので、あるのかないのかさえ分かりませんが、「プライバシー=人権の問題を感じつつ事業者がカメラ設置を推進している背景」には、「何でもかんでも施設側の責任にしようとする入居者家族等の存在もあるだろうな」ということでした。

 僕が所属する法人でもほんの一部配備しましたが、「カメラ配備によるプラス効果」と「人権侵害」を天秤にかけプラス効果を優先して配備したのではなく、今後、想定される家族等から言われるかもしれない「不当さから職員を護ること=職員の人権」と「入居者の人権」を天秤にかけ熟考の末、僕らの中で「職員を護ること+入居者の生活へのプラス効果」が「入居者の人権を護る」を51対49で上回ったのでカメラの配備を決断しました。それぐらい「カメラの配備」は大変なことなんですよね。
 僕は、カメラを配備しましたが、それが「人権を侵害している」と捉えていることに変わりはありません。

 また、こういうことの調査事業でも報道でも関係者の方々にお願いしたいのは、こうしたことの背景にある介護事業における「職員の配置数=国の仕組み」を正確に国民の皆さんに知らせて欲しいことです。
 どのような国の仕組みの中で「介護の仕事」はあるのか、ほとんど知らされていませんからね。また、報道者の中にも正確に知らないまま報道されたり、コメンテーターの方も語られたりしていますからね。ガッカリしますもん。

 僕が言うのもなんですが、よろしくお願いします。

写真

 名古屋の名物と言えば「きしめん」が上位にランクインすることでしょうが、漫画ゲゲゲの鬼太郎に出てくる妖怪「ぬりかべ」のような幅広麵(写真)のきしめんが、僕にとって名古屋きしめんになってきました。
 これがまた「美味い!」んです。