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辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方

辻川 泰史 (つじかわ やすし)

一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。

プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)

1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66

介護事業経営の意識

 介護事業の経営者にとって、職員のがんばりを正当に評価し、給与や賞与で還元していくことは重要で、少しでも多く還元したいと願っている経営者が多くいます。しかし、介護保険事業である以上、人員配置基準や介護報酬などは同業者と同じです。

 たとえば、デイサービス事業でAデイサービスとBデイサービスがあったとします。両事業所とも定員10名で稼働率が8割程度、賃料等も同じだとします。しかし、AデイサービスとBデイサービスの職員では、給与に差がある場合があります。

 これは、経営者の方針が一番大きいと思います。何が原因かは一概にいえませんが、大きな要因は経費をかけすぎていることです。「人件費」「初期投資」「車両費」「借入」等、無駄に多くかけていることで、職員への還元が少なくなっていることがあります。

 特に人件費です。同じ10名の利用者であっても、状況によってはスタッフが3、4名で対応可能な場合もあれば、逆に入浴介助に負担があったり、利用者の徘徊が多いなど、スタッフが5、6名でないと対応が難しい場合もあります。

 すると、売上は同じでも、人件費は大きく変わります。そうなると利益率は当然低くなります。「毎日職員を増員しなくてはいけないのか」というとそうでもなく、日によっては人員配置基準の人員で対応可能な場合もあります。

 しかし、職員の立場からすると「利用者の安全」のためにマンパワーで補おうとする傾向が強く、介護現場で聞かれる「人が足りない」という意見を経営者に進言します。すると、経営者側も現場の意見を尊重したい、現場のことをあまり理解していないので人員を増やす方針にします。人件費が上がり続ける、稼働率はよいのに利益が一向に出ないという悪循環を招きます。

 それでは、どうすればよいのでしょうか。1つの方法は、業務オペレーションを見直すことです。なぜ人材不足なのか、どういう状況で人が必要になるのかを分析し、対応方法を考えていくことです。

 そして、職員を増やすことで職員への還元率が低くなるのを説明していくことです。そうした理解を職員がもたいないと「こんなにがんばっているのに給与が低い」という不満につながってしまいます。

 職員に細かく経費を説明することができればよいのですが、状況によっては難しい場合もあります。ただ、1日の売上を計算するのは簡単です。

 利用者数×介護報酬=1日の売上

 1日の売上から、職員の1人当たりの日当を引くと、大ざっぱではありますが、利益が出ているかどうかがかります。

 人件費を引いた利益から、賃料、光熱費、通信費、車両代等を支払うということを、簡単にでもスタッフに説明するべきです。経営者として、自社の財務状況を大まかでも説明し、そのためにはこういったことをする、こういった経費はかけられないという説明を職員に説明し、同意を得ることは経営者の責任です。そのためには、介護事業の経営者自身が自社の状況を把握する必要があります。

 驚くべきことですが、自社の月次決算すら認識していない場合も多くあるのが現実です。税理士とのかかわりは決算の時のみという場合も多いのです。これでは、自社の健康状態が1年で一度しかわかりません。

 まずは、経営者自身が自社の状況を把握するための環境を整えるべきです。税理士と契約すると、それなりの費用が生じます。そうはいっても非常勤職員の給与の半分もしません。使うべき経費の理解を経営者自身がもつべきだと感じます。介護保険事業は「同じルール、同じフィールド」で行う事業です。

 どう舵取りをしていくか? その舵取りによって、職員の生活の質も大きく影響することを深く考えていくことが大切だと感じます。

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