辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方
一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。
- プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)
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1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66
人材獲得の末期的状況
介護業界は人材獲得が末期的な状況であるため、特定産業分野として外国人を積極的に採用する必要があります。この介護業界で20年以上にわたり従事し、経営している自分としては寂しい限りです。
私自身が新卒で入社したときに外国人スタッフはわずかでした。夜勤に、ブラジル日系人の方が数名、あと、台湾出身でご主人が日本人というスタッフが数名でした。それでも他の施設に比べると珍しく、同級生と話しても驚かれた記憶があります。
入社して1年ほどした頃に、中国人の留学生が入社してきました。経営側は、人材不足を補うため、また夜勤スタッフを確保するために外国人を採用するという、他施設が行っていないことを率先して行う先進的な取り組みとして、考えていたようです。
20年前のことですから、利用者様のなかには大正生まれ、さらには明治生まれの方もおり、昭和10年以前の生まれの方がほとんどでした。戦争を経験された方ばかりでしたので、少し抵抗をもつ方もいたのが現実です。
私自身、介護専門学校を卒業したので、それなりに専門分野を2年間学んだという自負がありました。差別ではなく、無資格で、経験もなく、国籍も違う人と同じような待遇で働くことに不満をもっていたのが正直なところです。
当時のように介護施設に若い人材を多く見かける時代ではなくなっています。不人気というだけでなく、労働人口の不足もあります。自己実現が重視される時代において、献身的な仕事である介護職に魅力を感じられなくなっているというのも現状です。
「利用者様のために!」というような魔法の言葉! で人が動かなくなってきたことに気づかない介護業界の経営者、管理者がいまだに多いことが残念です。
また、自社の経営のためだけに外国人を積極的に採用しようとする経営者もいます。経営にとって人材獲得は重要課題でありますが、今いるスタッフの心情も考えずに「先進的な取り組みだ!」とばかりに進めてしまうのです。そうはいっても、今の介護職で、自己の立場と同僚の立場を見比べて不満をもつなどの気概のある介護スタッフが少ないのも現状です。
介護職という仕事は、真剣に向き合えば学びが多いものです。文化の継承を担っているといっても大袈裟でないこともあります。利用者様と会話をしていると、昔は○○だったよ! と話されることが多くあります。認知症だからな? と疑問に感じることも多々ありますが向き合うことで事実であった埋もれた地域の歴史を知ることもできます。
私の経験で、まだ現場で訪問介護を行っていたときですが、認知症の男性のご利用者様がいつも、昔、ここにはプロ野球があったとおっしゃるのです。東京都武蔵野市にそういった野球場はなく、野球好きの私でも、知り得ることではありませんでした。しかし、あまりにも毎回話されるので調べてみました。
すると、それは本当だったのです。国鉄スワローズの武蔵野グリーンパーク球場というものがあり、実際に16試合行われていました。こういった地域の歴史を利用者様から教えていただき、私は職員や後輩に伝えていくことで地域の歴史、文化が伝承されます。
人材不足だからこそ、綺麗事抜きの介護の仕事のよさを考えてみたいと思います。