辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方
一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。
- プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)
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1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66
鵤公舎
以前、鵤公舎(いかるがこうしゃ)の小川三夫先生の講演を聴く機会がありました。小川先生は、奈良の法隆寺に修学旅行に行った時に大工を志したそうです。
学生時代は記憶力が悪く、中学の時の先生には「おがわてんにならず」と言われたそうです。宮大工になるため、勢いで奈良に出られたとのこと。最初に行ったのは奈良県庁で、そこで法隆寺の西岡某さんを紹介されたそうです。
法隆寺に行き、大工の方に「西岡さんはいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、西岡は3人いるとのこと。「俺は西岡常一だ」と言います。
宮大工になりたい気持ちを伝えると、今は仕事がないと断られたそうです。そこで、せっかくだからと、文部省に推薦書を書いてもらい、帰ったそうです。しかし文部省では「大工を養成する省ではない」と言われたそうです。
奈良県庁では西岡さんのお父さんを紹介されたそうですが、記憶力が悪かったお陰で、西岡常一棟梁との縁ができたとユーモアを交えて話していました。
仮にフルネームを覚えていたら「親父は高齢だから弟子はとらない」と言われ、その場で終わっていたと思うといいます。記憶力の悪さが運を開いたというのです。
西岡常一棟梁との出会いがすぐに花開いた訳ではなく、弟子入りするまで3年かかったそうです。
弟子入りを断られた後に、長野県飯山の仏壇の屋根を造る仕事をして腕を磨いたそうです。その後、図面引き等を行い、やっと弟子入りできたそうです。
しかし、弟子にするといわれたことはなく、「納屋に上って掃除をしなさい」という言葉が、弟子入りを認めてくれた証だと察したそうです。納屋には道具箱があり、それを見せることが弟子入りを認めたことだと感じたそうです。
その後、独立し、現在は多くの弟子をとっているそうです。弟子の育成の心構え、木を活かすということが何事にも通じる話がありました。いくつか紹介します。
※中学卒業したての弟子入り志願者と、六大学を出た志願者のどちらを弟子入りさせるか?
中学卒業したての子をとるそうです。理由は、六大学を出たての青年は「中途半端な知識をもっている」「能力のある子は辛いときに他を見てしまいがちになる」とのことです。
辛くなる時が必ずくる。その時に割に合わない、他のほうが向いている、友人はこうだ等と雑念をもってしまいやすいからだそうです。よくわかる気がします。
他の会社ではこうだった! 前はこうしていた等と強く持ちすぎると、あわないことがあると思います。確かに経験は大切ですが、そこには「素直さ」が欠けてしまうことがあります。小川さんは斧を研ぐように言われたら、止めろと言われるまで止めずに、師匠の言葉を信じて針になるくらいまで研ぐ子が成長するといいます。
※木の個性を活かす
木の育った環境を考えた登用をする。生育するときに西側の側面が外であれば、建築に活かすときに同じ方向で用いる。そうしないと、急に日が当らなくなったり、日が当ったりすると木が傷んでしまう。
※木を植林しているときには抜き枝をする
木も片側だけに枝が偏ると、重心がずれて真っすぐ生育しない。重心が真っすぐ上に伸び生育するように、抜き枝して成長を見守る。そうすることで良質な気になる。
これは人を育てることも一緒で、上司や親、教師は、部下、社員、生徒が真っすぐ育つように抜き枝をしなくてはいけない。
・昔は木の運搬に何カ月も要した
これは不便に感じるが木にとっては良い事。運搬する間に乾燥し、木の癖が出て、実際に使える木になる。木に魂が籠る。昨日切ったような木を材質にするから、家を建てた後に木の癖が出て歪む。
何事も「寝かせる時間」が大切とのことです。仕事も同様で、時が大切なこともあると思いながら聞いていました。
・先走って教えない
教えないことも親切
・軽い限度で沢山、釘を打て
現代は、釘打ち機で一発で釘を打つから、何本も必要になり、強度がない。たくさん打つことで釘に強度が生まれるとのこと。
社員に何かを伝えるときには、1回で伝えようと思ってしまいます。しかし、その社員の心に訴えるには時と場合を考え、何度も時間をかけて、伝えていくことも大切だと感じました。