辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方
一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。
- プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)
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1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66
AI
最近、ニュースでも多く取り上げられるAI(人工知能)ですが、介護の現場でも普及するのか? と興味のある方も多くいると思います。
マイケル・A・オズボーン博士の「未来の雇用」によると、人間に残された仕事のスキルとして、2つのスキルがあると定義されています。1つはCreativityという創造性。もう1つはSocial Intelligenceという社会的知性。
日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン准教授が米国および英国を対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめました。それによると、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと推計されました(https://www.nri.com/jp/news/2015/151202_1.aspx)。
AIが行いきれない仕事として、介護はどうでしょうか? 排せつ介助や歩行介助などは、一見、ロボットでもできそうなことに思われるかもしれません。しかし、作業的になってしまうことも否めないのかもしれません。
しかし、AIの進歩で、利用者の顔色や声色を見て適切な声かけや対応を学び、良いケアができるのかもしれないという期待というか不安もあります。不安というのは何かというと、人との関わりが希薄になることです。
終末期や高齢になった際、人との関わりで癒されることもあります。それがすべてAIに一任されるようになってしまうと、人間味というものが失われてしまうのではないかという不安です。
労働人口の減少、特に介護業界は不人気という側面もあります。介護が必要になったらAIに……というのは寂しく感じます。ただ、ここ数年、心ない介護職による利用者への虐待などを見ていると、AIのほうが安全で安心なのかもしれない、と思わざる得ないことも少なくありません。
介護事業所にとって人材確保と育成は、一番重要な経営要素でもあります。人財によってサービスの幅の増減もありますし、個性も変わってきます。人財があっての介護事業です。そこがAI依存になってしまうことは寂しさもあります。
介護の仕事は、何も排せつ介助、食事介助だけではなく、利用者様と接することで得ることも多々あります。私自身、20歳のときに戦争経験者の利用者様から戦時中のこと、地域の文化のことなど教えていただきました。
介護の仕事は利用者様との関わりを通して歴史や文化の伝承も担える側面もあります。AI中心になってしまうと、そういった先人からの伝達が途絶えてしまい、それはもったいないことです。
今、どこの介護事業所も直面している人材不足という問題。どう乗り越えていくのか?と悩みもありますが、そういったときだからこそ、介護の仕事の意義を考えてみる時期でもあると感じます。