辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方
一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。
- プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)
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1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66
真似ぶ
私はルパン三世がすごく好きで、学生時代、社会人一年目と数回、坊主風にし、V字に刈り込みを入れたこともあります。周りからは、「剃り込み?」と言われていました。究極の自己満足! でした。ルパン役の声優の山田康雄さんがお亡くなりになったときは寂しく、「これから、ルパンを見れない!」と、作者のモンキー・パンチさんと同じくらい、ショックを受けたと勝手に自覚しています。
しかし、救世主が現れたのです。栗田貫一さんです! モノマネ芸能人です。しかし、モノマネ芸能人はパロディー色が強く、「笑」は広められますが、「感動」を広めることは難しいと感じます。どうしてもオリジナルと比べてしまい、時に不快になってしまうこともあります。
なぜ、栗田さんが山田さんの死後、ルパン三世の声優として13年以上も受け入れられているか考えてみると、栗田さんはこんなことを言っています。
「山田さんが生きていたら、僕は一生ルパンファンのままであったと思います。山田さんという手本があれば、完璧にルパンをものまねできるが、亡くなっているので、完全には真似できません。僕は山田さんならきっとこういう感じで表現すると思いながら、山田さんのルパンの匂いを少しでも出せるよう演じている。今でも収録前には山田さんのルパンの映像を見て雰囲気や匂いに加え、山田さんの声を徐々に出しながらスタジオに向かっている」
同時に「自分は山田さんのものまねであるという認識とともに、山田さんが作り上げたルパンを貶めてはならない」
これだけ聞けばわかります。爽快感を与える真似です!
子どもを見ていると、良いことも悪いことも、大人の真似をします。近くに子どもがいる方は経験があるのではないかと思います。子どもがヒーロー物を真似るのは好きだからです。
好き=憧れ
「学ぶ」の語源にあるように、真似る(マネル)は学ぶ(マナブ)です。
仕事に当てはめて考えてみても、上司や先輩の行動などを「真似」ているうちに、それが自己の元となり、できてくる、自信がもてることも多々あります。尊敬する上司や先輩を真似るにも、相手に「好き」「憧れ」の感情があるから真似たくなるのだと思います。「真似」は必要です。しかし、真似をするにも、最低限のモラルが大切です。真似をしたい対象の方が「不快」に思わないようにすることが大事だと感じます。
私が真似され、不快だった経験です。数年前、当社の通所介護を見学に来たAという居宅介護支援事業所の方がいます。そこから、利用者様も紹介され、有効な関係が築けていると感じていました。しかし、あるとき、「今月から通所介護を開設する」とのお知らせが来ました。「一言くらい、言ってくれてもいいのにな。でも、まぁ忙しかったんだろう!」くらいの気持ちでした。
当社の通所介護を利用されている方が、「担当のケアマネさんからもう一つの通所介護に行くように強く勧められたので、断るのが悪いから行くことにした」とのことを伺いました。担当のケアマネさんはA事業所の方です。それから、しばらくして、その利用者様が当社の通所介護を利用された日のことです。連絡ノートの内容、字体が違うのです。よくみると、Aの通所介護事業所の連絡ノートでした。目を疑いました。同じメーカー、同じ書き方、同じ項目、プログラムも全く同じ、送迎車、ユニフォーム、全部が真似でした。
真似をされるのは、「目標」とされているから光栄です。しかし、ノート一つとってみても、試行錯誤、スタッフとの努力の結晶です。皆で相談し、書き方、内容など苦労して築いたものです。著作権がないからと言っても何でもあり? 私たちが欲しかったことは「教えてほしい」「参考にさせてほしい」等の気持ちです。それがないと、真似ではなく、「パクリ」と感じてしまいます。
私は、「これいいな!」と感じたら、「真似していいですか?」「参考にさせてもらっていいですか?」と必ず聞くようにしています。そうすると、そのやり方になった経緯なども伺うことができ、深く知ることができます。
こそこそ、真似ても気分が悪いです。たとえ表面的なことは「パクル」ことができても、それは「本物」ではないと思います。
栗田さんのように、真似させていただく方にも、周りにも、爽快感を与えることができるくらいに、誠意、真剣さ、をもち、真似し、学び、成長していきたいと思いました。