辻川泰史の介護事業経営に必要な考え方
一期一会の出会いを大切にし、介護のプロとしてサービスを提供する辻川泰史さんによる、これからの事業所運営の指南ブログ。
- プロフィール辻川 泰史 (つじかわ やすし)
-
1978年東京都生まれ。98年、日本福祉教育専門学校卒業。
老人ホーム、在宅介護会社勤務を経 て2002年、(有)はっぴーライフを設立(05年に株式会社化)。08年、(株)エイチエルを設立。現在、コンサルティ ング、講演、セミナーなどでも活躍中。
著書に『福祉の仕事を人生に活かす!』(中央法規、2009年)がある。
はっぴーライフHP
http://www.hl-tokyo.com/
対談ムービー http://www.youtube.com/user/2g66
3.11から5年
2011年3月11日の東日本大震災から5年が経ちました。いまだに仮設住宅での避難を余儀なくされている方もおり、少しでも早い復興が望まれます。
3月11日の震災時、私は2013年4月か14年3月まで、岩手県と介護人材育成確保のコンサルティング契約をし、被災地である沿岸部にも毎月のように行き、現地の介護事業経営者や介護従事者と接してきました
高台にある老人ホームのスタッフの方から聞いた話では、震災では津波が自分の家の周辺を飲み込む光景が見えたそうです。母親と祖母が家にいるかもしれないと心配になったそうです。
本来の人の気持ちとしては、仕事を抜けて家族の安否確認、救出に向かいたいと感じるものだと思います。
例えば、飲食業や製造業であれば、震災等の被害が出た際はお客さまが来ることは少なく、身内の安否確認に向かうことができます。
しかし、介護の仕事はそうはいきません。目の前には利用者がいます。それから数日間、家族の安否を確認する余裕もないほど、施設で利用者のケアに従事したそうです。
幸いその方の家族は無事だったそうですが、同じような体験をした方が多くいます。
介護の仕事は時に自分の家族よりも優先し、利用者のケアを行わなくてはいけません。それは仕事の使命です。
大変な状況を乗り越えてきた介護職がたくさんいます。どの業界でも「お客さまのため」という理念はあります。しかし、介護、医療の仕事ほど、これを実践できた業界はないと思います。
言葉だけでなく、大きな災害時に利用者さまのため、と歯を食いしばってサービスにあたったことは
介護業界の魅力だと感じました。
日本は1000年周期の地震の活動期に入っていると提言している地震研究家も居ます。それにどう備えていくか?
東北の介護業界の方々が実践してくれた姿勢を模範にし、危機意識をもち、自分の住む地域で万が一、そういった事態になったときに備えて準備をしておくことが大切ではないでしょうか?
大前研一さんの訳書に「ハイコンセプト~新しい事を考え出す人の時代~」(三笠書房)という書籍がありますが、介護従事者が時代をリードする!という内容が書かれています。
その中の一文を紹介します。P26(一部省略)
「専門力」ではない「統合力」の時代この、ニ、三十年ほどの間、
世の中はある種の知識を持った特定の人たちのものであった。
プログラマー、弁護士、MBAなどである。
だが、これからの世界で成功を収める上でカギを握る要素は変わりつつある。
未来をリードするのは、何かを創造できる人や他人と共感できる人、物事に意義を見いだせる人である。
つまり、芸術家や発明家、デザイナー、ストーリーテラー、介護従事者、カウンセラー、
そして統括的に物事を考えられる人である。
未来をリードする職種に介護従事者が入っていると記述されていますが、残念ながら介護従事者全員が当てはまるわけではありません。仕事を通して、「物事に意義を見出す」という意識が必要です。
介護の現場では多くの利用者と接します。なぜ、この利用者と出会ったのか。利用者は認知症、寝たきり、遠慮気味などさまざまです。そういったかかわりの中で、ちょっとした一言、ちょっとした溜息、ちょっとした顔色の変化などに、介護の現場では意味を見出そうとします。
そういった日々の仕事を通して感性を磨いています。利用者は何を教えてくれたのか? どんな学びにつながるのかなど、個人個人で仕事に意義を見出していくことで、新しい考え方が生まれていくと思います。
ちょっとした物事に意義を見出していく事を常に行っています。
しかし、それを活かすことができていない、当たり前になってしまっていることがあります。
物事に意義を見出すことを意識していく事が重要だと改めて感じました。