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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

日本のケアマネジメントの現在地

 先週の土曜日、私は新御徒町駅近くの中央法規出版の4Fにいました。このところ、毎週くらいの頻度で足を運んでいます。今回の用向きは「野中塾」のNPO法人化記念セミナーへの参加です。

 名称が「野中ケアマネジメント研究会」となっているように、今年、急逝された故野中猛先生の事例検討手法を引き継ぐ方々が発起人です。野中先生の夢の1つに「日本ケアマネジメント研修センター」があり、そのスタートとしての取り組みです。


 今回参加された顔ぶれは、関東近県だけでなく、広島・京都・新潟・島根などから参加され、その顔ぶれは私にとってはケアマネジメント学会や地方の研修会でお会いするおなじみの顔もあり、なつかしさも合いまった発足セミナーでした。

 「ケアマネジメントの本質~制度改革の視点から~」を講義されたのが安西信雄教授(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)です。

 精神障害者リハビリテーション学会「四人組」の1人として野中先生の功績を話された後、精神障害者にとってケアマネジメントはどのように活用できるのか、また必要なのかを講義されました。

 「日本は人口1万人あたりの精神病床数は世界トップです。諸外国は、1960~1970年代から減らしてきたのに日本だけは増加しています」


 諸外国の「脱施設化」の流れとともに、なぜ施設が問題か・・・

  • (1)精神病院のなかの「職員-患者の歪んだ関係」が治療を妨げる
  • (2)刺激が乏しい保護的入院環境で長期に生活すると自立した地域生活が困難になる
  • (3)ヘルパーなどの力を借りながら社会の一員として生活することは障害者の権利である

 などを話されました。

 しかし、一方でアメリカの脱施設化の弊害として・・・

  • (1)退院患者の50~60%は地域生活を2年間維持できない
  • (2)年間の再入院率が30%増加し「回転ドア現象」が生まれた
  • (3)地域での生活の質は貧しく「ホームレス」が増加した

 などにも触れられ、日本において、とくに統合失調症を中心に地域生活支援がどうあればよいかを話されました。

 実は日本では、糖尿病やがんを抜いて精神疾患がトップに来ている現状があり「5疾病5事業」にすべきだと話されました。


 続いては白澤政和先生(桜美林大学大学院老年学研究科教授)の講義です。印象に残ったのは「自立のとらえ方」です。

 自立の意味を、自己決定(自己責任も含めた)と身辺自立(ADL)の2つの側面でとらえるべきであり、介護保険は身辺自立に偏り過ぎているとの指摘でした。

 その点で、日本社会福祉士会が示した定義は評価できるとも。

 「利用者の有する力(意欲、他者との関係性、思考、知識、自己決定、サービス活用等)を高めるとともに、利用者のニーズに適合した多様な社会資源を利用者が活用できるように支援すること」

 私も、この定義のよいと思った点は「利用者が活用できるように支援すること」という点ですね。あくまで主体は利用者本人であること。

 その意味で、ストレングス・モデルに通ずるものがあるとも。


 また現場のケアマネジャーの利用者観が「マイナス視点」になっており「~ができない人」という否定から入ることが問題であり、本人のストレングス(強み)に着目し、本人が個別の問題や状況に打ち克っていく支援が必要と話されました。

 いま、日本のケアマネジメントはどのような地点にいるのか。介護保険が始まりほぼ15年が経過しています。準備段階の1990年代のゴールドプランを含めれば約25年間です。

 ケアマネジメントに決定的な影響を与えたのがWHOが設定した「ICF」(国際生活機能分類)でした。ICIDH(国際障害分類)から進化し、その流れの中でストレングスモデルやリハビリテーションモデル、さらにリカバリー、エンパワメント、レジレンスなる新しい視点や手法が生み出されています。

 まさにその進化の途中にいるとするなら、これから5~10年後はどのような様相を呈しているのでしょうか。なにより、そのとき、決定的に異なるのが対象となる高齢者の特長です。明治・大正の戦前・戦中生まれの高齢者ではないのです。

 これからは戦後の団塊世代が対象です。そのとき「そもそも」の定義が問われる時期がくると予想します。

 自立や自律の定義だけでなく、自己決定やニーズや支援のあり方も・・・それを「学問体系の流れ」だけでなく、現場の実践における「トライ&エラー」で模索するところそのものに、実学としてのケアマネジメント学の発展が約束されるのではないかと、私は考えます。

 その私なりの試みの1つが「CADL」なのです。

 おそらく故野中先生も、現場に沿ったアクティブな試みを望まれ、もしご存命ならば、存分に実践されていたように思います。

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