高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
ご家族への支援
この時期、恒例となった東京都の現役職員&家族&OBを対象とした介護講座。3年前は私が一日を担当しましたが、昨年は午前中は遠距離介護の会パオッコを主宰する太田差惠子さん、午後が私でした。今回は午前中はファイナンシャルプランナーの方が、午後が私でした。
私の担当は「介護にかかるお金」の話なのですが、昨年は遠距離介護、今年は有料老人ホーム&サ高住に入居するための費用がテーマでした。まさに時代は、体力・気力&経済力が求められる「遠距離介護」から見守り&サービス付きの安く入れる施設入居に、関心は移っているように思います。
それは、さておき・・・私は単純に「いかに費用がかかるか」「いかに安く上げるか」というお話をするわけではありません。まずは、「だれと、どこで、いつから、どのように、暮らしたいのか」をわがことの問題として考えてもらいます。
介護が大変だから親を施設に入所させる!という発想は、本人の意向を無視(ないがしろ)して子どもの都合でコトを運ぶという事になりかねない、というお話をします。
もちろん、現在進行形で介護されている方もいらっしゃるので、在宅介護にも同居介護、近隣通い介護、遠距離介護があり、それぞれのメリット・デメリットをお話し、とりわけ心配な老老介護と独居介護の関わりのコツなども具体的にお話します。
今回もまたまた実感したのが、参加者40名近くの6割にあたる現在進行形で介護をされている方々にケアプランが届いていない、もらっているけど見方がわからないという事態が進行していることを実感したのです。
まず、1表に「本人(家族)の生活への意向」欄があり、2表とは提供されるケアのプランニングがされた計画書であること、3表は1週間におとしたスケジュール表であることを説明します。
まず、その反応でわかります。ほとんどちゃんと説明を受けておられないな・・・ということです。理解力がないというわけでありません。都の職員ですから、仕事上、行政的な発想ができる方々です。職務も一般事務職から教員、薬剤師の方までいます。
つまり、理解力という点ではまずは申し分ないかな・・・と。
なのに「ケアマネジャーにこちらから注文を出していいとは知りませんでした」「どのように言えばいいかわからないんです」という声がどうして起こるのでしょうか?
もちろん、たまたま担当したケアマネジャーが威圧的だったり、すべて任せて下さい的な態度をとったりしたので言えなくなったのかもしれません。ところがどうでしょう・・・2表の見方がわからないのは?そこに書かれていないことはケア目標として取り組まれないということの認識は、残念ながらありませんでした。
それもビギナーの介護者ではありません。すでに1年以上経験した人たちです。
さらに・・・
フェイスブックにも書きましたが、「いま、現在進行形で介護をされている方、ちょっと手を挙げていただけますか?」
右端の後ろにいた50代の女性のSさんが手を挙げくれました。
「もしSさんに、週数回来てくれているヘルパーさんが、食事介助や入浴介助、移動する際の誘導の仕方など、プロなりのやり方を教えてくれるとしたら、どうでしょう?いらぬおせっかいですか?」
Sさん「そんなことありません!ぜひとも教えてもらいたいです。本当に不安で不安で困っているんです」
このSさんは同居介護が1年以上の経験者。ヘルパー研修も受けることもなくいきなり母親の介護が始まったそうです。
「訪問介護でヘルパーが行うケアがプロの介護、でもそれは点ですよね。24時間のかなりの時間を介護している家族が行うケアは素人の介護です。経験がないので、つい力任せにやったり無理な姿勢を取りますよね。それは事故につながるかもしれないし、なにより介護されているご本人にとって不安なことではないでしょうか?」
こう話すと、みなさん、おおきくうなずかれました。
ケアマネジャーのみなさんがケアプランやサービスの内容についてわかりやすいように説明するだけでなく、自宅で介護サービスを行っているヘルパーのみなさんがご家族に「プロがやっている安全な介護」や「力を入れないでもできる介護」「腰に負担をかけないベッド移乗」「嚥下でむせない食事介助の仕方」などを教えるだけでも、ご家族の介護負担は減るのではないでしょうか?
これらのことを絶対にやるべきこととまでは言いませんが、利用者(家族)の方たちの立場に立てば、もっともっとできることがあるはずではないでしょうか?
自分たちが提供するサービスの質の向上やリスクマネジメントばかりでなく、家族介護の質の向上やリスクマネジメントに協力できることはあるのではないでしょうか?
私はそういう事業所が「生き残る事業所」であってほしいと願っています。
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