高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
考えるヒントの本音:家族さん
9月号が先週私の手元に届きました。今回のコラムのテーマは自分なりに「ようやく言えた、よく書けた!」という、妙な達成感(自画自賛ですかね(^_^;))のあるものでした。ですから、読者の皆さんの反応にちょっとワクワクしたり・・・。
今回、どうして、このテーマを選んだか、それをお話しましょう。「家族さん」という言い方が、介護・福祉業界でそれはそれは蔓延していることに強烈な違和感を抱いたからです。
もちろん、「家族さんとは、ご家族の方々を包括的に言う呼称である」くらいはわかりますよ。でもねぇ、十羽ひとからげにしてしまうとマズイんじゃないでしょうか? だって、夫や妻や子どものだれが面会に来たのですか?さっぱり、わかりませんよね。
今回の冒頭のエピソードに挙げたのは、わがスタッフKさんの実話です。今回の執筆にあたり、コンセプトをなにげなく話していたところ、「先生、そういえば、私も言われたんです!・・・」とKさんは話してくれました。
簡単に言うと、半年ぶりに有料老人ホームにいる夫の母(義母)を見舞ったとき。看護師から「ご家族さんですか?」と尋ねるので、ハイと回答。すかさず「先週、お伝えした件はどうなりましたか?」とたたみかけるように質問されて動揺。正直に「すみません、聞いていないので」と答えると、先方は怪訝な表情をしたそうです。
「まるで責められているような気分になりました」
この話は、まさに「家族さん」という現場の呼称が、いかに「家族さん」たちを動揺させ、怒らせているか、を象徴しているなと思いました。なので、本人の了解のもと冒頭の書き出しで使わせてもらったわけです。
私なりにけっこう悩んだのは、どうして現場の人は家族さんという言い方をするのだろうか?ということです。
「家族が来ています」では、ちょっと偉そうですよね。だから「家族さん」と呼ぶのかな・・・?と想像したり。家族・親族、すべからく家族だから、まとめちゃえということかもしれない・・・。つまり「楽」なんだろうな、と。
とにかく家族の誰かが来ていればいいわけで、家族の誰が来ているかどうかは「わずらわしい」ことであり、あえて知っておくほどのことはないと思っているんじゃないか、と・・・。
あとは、みんながそう言っているから「まっいいか」と付和雷同している人もいるでしょうね。あまり深く考えずに・・・。
あと、以前から気になっている「息子さん、娘さん」という言い方です。事例検討会でよく言いますね。ところが男きょうだいなら長男・次男・三男があり、同じく女きょうだいなら長女・次女・三女があるわけですよ。なのに平気で「息子・娘」でまとめている。
さらに驚いたのは・・・
「まさか、本人に向かって息子さん・娘さんと言っていないよね?」
と確認すると、キョトンとして「えっ?言っていますよ。ダメなんですか?」という回答・・・これは大変です。どうして「介護・福祉・医療の人」は偉そうなのか、という一般的に認識される原因の1つにこれがあるな、と10年前に気づき、ずっと言い続けています。
それも今回の連載で後半に書くことができました。
積年の恨み(^_^;)ならぬ「大疑問」を書くことができたこと、われながらうれしく思っています。ただし、編集部に入稿した原稿がいまヒトツわかりにくかったので、すべて破棄してもらい、再度書き直すという作業が加わりましたが・・・(>_<)。
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