高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
訪問介護の可能性
昨年から訪問介護のサービス提供責任者の方を対象とする研修が増えています。内容も「訪問介護の可能性」に関わる内容です。とくに多職種連携や地域包括ケアのなかでの「立ち位置」を知りたい、という希望があります。
もともと介護サービスとしては、とっても歴史のあるサービスです。どうして、あえてこのような不安が現場から上がるのでしょうか?それは「一段低く」みられているという意識があるからでしょうか?
とかく、「この程度なら家族がやっていること」「プロっぽさを感じないヘルパーがいる」などの評価が一方であります。今回は介護予防を地域支援事業に移行する流れで、要支援の方への訪問介護を地域ボランティアに委ねては、という意見に現場の反発はかなりのものがあります。
どうして、このような意見が生まれてくるのか、ちょっと考えてみました。そこで、たどりついた結論の1つは、訪問介護のヘルパーのみなさんへの「教育」がほとんどされていない、という実態です。もちろん、ヘルパー1~3級の資格を持たれているのは承知の事。でなくて、その後の事業所での研修であったり、自治体での研修のことです。
一番は「ICF(国際生活機能分類)」の研修がされていないことです。介護保険制度スタート時は「ICIDH(国際障害分類)」でした。障害が原因のためにできない点(マイナス面)に着目し、それをサポートする考え方です。しかし、3年後、ICFの考え方が日本の介護保険制度に導入され、ケアマネジメントも本人のプラス面に着目し、環境因子や個人因子まで含めるアセスメント手法に大きく変わりました。ケアプランの作成の視点や書き方まで・・・
ところがどうでしょう。本来、ケアプランを形にする現場の人たちが、ICFを学ばずに、相変わらず「ICIDH」的な考えのケアやお世話型ケアをしていたら・・・。そして分刻みに「業務をこなす」かのようなケアをやっていたら。それでは、自立(自律)支援に資するケアは望むべくもないでしょう。
私は、「皆さんの仕事は利用者の方の『暮らしに貼りついた仕事』です」とお話をします。
「ケアマネジャーさんが利用者宅を訪問するのはせいぜい月1~3回程度です。それも食事時や排泄時をねらっているわけではないです。ADLの様子やIADLの様子を逐一観察する機会はありません。ところが、みなさんだけがそれを行っています。通所介護や短期入所はお預かりしてのサービスです。ご本人の暮らしのど真ん中で支えているのはみなさんしかいません。表情や体調の変化、服薬の様子、感情のこまやかな変化を把握できるのはみなさんしかいません。ですから、ぜひ、みなさんはアセスメントの視点を持ちながらケアを行い、そして把握した情報をケアマネジャーさんを通じて、他のサービス事業所に伝わるような工夫をして下さい」
ですから、私は現場のヘルパーのみなさんにICFにもとづくアセスメント手法やケアプランの読み込み方を学ぶ機会をつくる必要をとても感じています。
それをサービス提供責任者の方に求めません。それを担うのは、併設の居宅のケアマネジャーであり、地域の主任介護支援専門員、そして地域包括支援センターの主任介護支援専門員だと考えます。
このような話をすると、サービス提供責任者のみなさんは、とても力強くうなづかれます。多くのヘルパーのみなさんは「よいケア」への思いを強く持っていると思います。
「思いをカタチ」にする役割がケアマネジャーのみなさんに求められていると思います。
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