高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
考えるヒントの本音:その人らしさ
月刊ケアマネジャーの今回の連載テーマは「その人らしさ」。
福祉・介護業界の「不思議な言葉たち」の筆頭にあがるのが、この「その人らしさ」です。このファンタジーっぽい言葉は巷にあふれていますね。認知症ケアの雑誌を読むと「その人らしさを大切にする」なんて言っておくだけで、本人の個性を尊重している、とてもいいケアをやっているかのような印象を与えるから不思議です。
先に自己防衛的に言っておくと、「その人らしさ」という表現は嫌いではありません。うまい言い回しだなと思っていました。
と、ところが研修のグループ討議で「私たちのケアマネジメントに足りなかったのはその人らしさの視点でした」なんて発言を聞いて、フト疑念が湧いたのです。
「これって、だれにとってのその人らしさ?なのかなぁ・・・」と。
いろいろ考えてみると、「その人らしさ」って、援助者側の一方的な決めつけだとわかったのです。本人にとっては「私らしさ」ですからね。援助者側が自分たちが描いた「その人らしさ」を前面に押しつけて、本人にとっての「私らしさ」がこぼれ落ちる・・・(※なかなか粋なイラストを書いていただけました。)
決めつけ視点の1つ・・・それは職業でしょう。以前の職業が大工だった、公務員だった、美容師だったなどです。大工だから横柄の口ぶり、公務員だからこむつかしい、美容師だからおしゃれと決めつけます。でもやさしい妻思いの大工も入れば、プライベートはとても楽しい公務員、仕事以外は自然派のナチュラルメイクが好きな美容師はいます。
そして決めつけの2つ目は「家族はみんな知っている」という幻想です。これは本当にひどいくらいに「そうだと思っている」ケアマネジャーが多くいます。
まずは言いたい。家族、とくに中年期になった子どもたちが、父母の少年少女期のことや20代のことなど知っているでしょうか?本当に稀でしょう。家庭での父母像と仕事や地域での顔はたいてい異なります。多くは「家ではダメ父ちゃん、ガミガミ母さん」が職場や地域では「頼られ、やさしく、支えてくれる」とてもいい人だったりすることはザラにあります。
だから、なにか事件があり家庭内のことが白日になると「あの人が家ではあんな風だと・・・?」と多くはビックリしますよね。
実は、プライベートの顔もパブリックな顔もどちらも本人にとっては「私らしさ」です。それなのに、家族の情報だけで「その人らしさ」を想像する・決めつけるなんて、「大きな誤差」が生じるのは当たり前です。
それをわかっていない。
では、どんなところに本人なりの「私らしさ」がでるのか・・・ということでいくつかヒントを上げました。
車好きにだってワゴンタイプ(家族でお出かけ大好き)とアウトドアタイプ(野原をガンガンとワイルドに走る自然派)では好みはちがいます。色だって「やっぱり赤だよ」という人もいれば「ブラック」を好む人だっています。
実は「私らしさ」はとてもシンプルです。
そのあたりのことを今回は書いてみました。この連載への「反論?」などがあれば、楽しみなのですが・・・(^_^;)。
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