高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
提案:熊本地震~シミュレーション訓練~
私が隔週で発行する「メルマガ元気いっぱい」。第457号(5月12日配信)のコラムは「地震対応シフトと地域包括ケアシステム~すぐにやること・やれること~」でした。
熊本の被災地を現地取材した数日後に配信しました。
その最後に・・・
「これまでの地域包括ケアシステムの構築は「平事」を前提にしていました。しかし活断層が約6000近くあり、いつM6~7の地震がいずこで起こってもおかしくない現実を突き付けられた今、地震という有事に対応するためには、初動3日以内、1週間、2週間、3週間などのステージ別に医療・介護・行政(自治体、消防署、警察署)・自衛隊・地域が有機的に動く「震災対応シミュレーション」の検討にすぐに入るべきと実感しました。
その最初として避難所となる公的施設(例:体育館、アリーナ、学校校舎など)の収容人数住み分けシミュレーションの提案をしていこうと思います。」
と書きました。
今回の震災でも全国から大量に物資が届き始めましたが、1週間もしないうちに待ったがかかりました。物資が届いても仕分けする人がいないという問題が持ち上がったのです。むしろ仕分けするノウハウがないために山積みにするしかないわけです。
ならばまずは止めようと・・・東日本大震災の時の教訓の1つは「お古の禁止」です。現地では衣服に困っているだろうと着なくなったお古が送られてくるケースが多々ありました。
また段ボール箱のなかに食品やお菓子、衣服が梱包されていて、その仕分けにも現場はかなり大変でした。
「善意」で送られてくるものを処分するわけにもいかず・・・中身だけでも確認されたいろんな大きさの段ボール箱が山積みされている光景を思い出します。
このように大量に送られた物資を避難所に運ぶノウハウやマネジメント手法を市町村の公務員は持ち合わせていません。それを得意とするのは日通、ヤマト、日本郵政、佐川急便といった「プロの物流会社」です。電話の不通にはNTTが活躍し、電気の停電には九州電力が活躍するというライフラインにかかわることはその道のプロ集団にまかせることが必要でしょう。
まさに東日本大震災ではヤマトやNTT、コンビニチェーンが大活躍したのは記憶に新しいところです。
ネットには次のようなことが紹介されていました。
概略です・・・
「かつてヤマトの社長に話を聞いたことがあるが、各拠点ではいつも荷物を配送しているのでどこに誰が住んでいるのかを把握している。さらに、その方々が避難所に行ったとしてもどこにだれがいるのかを大体わかっているので荷物を迅速に届けることができた。それだけでなく、市役所に沢山寄せられた荷物の仕分け方の指導もしていた。」
いかがでしょう?
今回も熊本県に日通やヤマトから協力の申し出があったそうです。災害支援の全体をマネジメントするのは市町村の役割であり、実務はプロの専門集団に任せる、そして全国から来たボランティアはその指示のもとに動くとなれば、かなり効率的でムダのない動きが可能となるでしょう。
これは全壊・損壊した家屋や道路の瓦礫処理を重機類を持つ土建業や産業廃棄物の専門集団に依頼することと同じです。
ではこのような仕組みは有事の際に作ることができるか・・・
それはノーです。
有事の時には気が動転して慌てるばかりです。
ですからこそ平時のときにシミュレーションを行い、まずは動けるための「仕組み」を決め、あらかじめ訓練をしておくべきだと思います。その点でまずおすすめしたいのは・・・
- (1)いっとき避難所を決める(これはかなり決まっていますね)
- (2)ライフラインを決めておく
- (3)避難所のゾーニングを行っておく
とくに避難所のゾーニングは重要と感じました。つまり声の大きい人、地域に力を持っている人が勝手に「場所取り」をしてしまうとあとあと不公平が必ず生じるからです。
次のようなゾーニングがあると思います。
- ・高齢者世帯ゾーン
- ・要介護高齢者ゾーン
- ・幼児・乳児ゾーン
- ・障がい者ゾーン
- ・町内会別ゾーン
などなど、ゾーン分けは地域の事情などに配慮して「取りあえず決めておく」ことで、有事にはまずはそれを頼りに場所決め等を行うことができます。
このプロセスを通じて、どこにどのような人が住んでいて、いざとなったときに誰が救助し、そしてどのように1週間を生き抜くかをシミュレーションすること・・・それがまさに防災・減災に役立つ地域包括ケアシステムづくりに貢献できるのではないでしょうか。
私が考えた被災後2週間の動きです。
- 1~3日 生命を守る3日間
- 4~7日 被災した心を守る3日間(PTSD対策)
- 8~15日 被災者の暮らしを守る・作る1週間
- 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第458号(無料)ムロさんの熟慮「感情を先取らない~決めつけられることの気持ち悪さ~」(第1・3木曜日に配信)です。メルマガは随時登録受付中です。⇒ ケアタウンの公式HP
- 第2期「新・ケアマネジメントの仕事術」東京スクールは6月からスタート!
◇シリーズ(1)「ケアマネジャーの仕事力~チームマネジメントとセルフマネジメント~」(定員15名限定)
|日 時|6月26日(日)10:30~17:00
|詳 細|http://caretown.com/tokyo/caremanage2806.shtml
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研修会場・写メ日記
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