高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
驚き:熊本地震~避難所を歩く~
前回の第1回は「被災地を歩く」を書きました。
震災から1か月が経過しても、いまだに余震は続き、予断を許さない状況が続いています。先日は関東の茨城県で5弱の地震があり、東京も震度3でした。
今回は6か所の避難所を歩いた様子を書きます。
避難所の多くは小中学校の体育館、空き教室、さらに市町村の総合体育館やアリーナなどでした。ところが体育館内も壊れているのでアリーナ周囲の廊下がスペースとして提供されていました。
今回の熊本地震の特徴は車中泊のようにスーパーや空き地に車中泊をする「にわか避難所」が現れたことです。
その理由はいろいろです。避難所が遠い、幼い子どもやペットがいるのでむずかしい、被災した人があまりに多くて落ち着かない、など。
車中泊は被災者の数の把握をむずかしくしただけでなく、エコノミー症候群という災害ではあまり使われなかった言葉がひんぱんに聞くようになりました。
益城町総合体育館の大駐車場では、日中は空きスペースにペットボトルなどが置いてある光景がいたるところにありました。いわゆる「場所取り」です。夕方戻ってきたときに場所探しで困らないための知恵なのでしょう。
避難所といっても、回った6か所の避難所自体、印象は異なりました。段ボールで仕切りがあるところはわずかで、多くはそのまま布団を敷いているようでした。3.11ではほとんどなかった「段ボールベッド」はどこの避難所でありました。自衛隊が用意した「段ボールベッド」はセットになっており、毛布や枕などがまとまって梱包されています。体育館やアリーナの床は冷たいうえに固いので、いくら毛布を重ねてもつらいものがあります。それに段ボールベッドだと段差があるので高齢者にとっては「立ち上がる手間」がなく、すぐに立位に慣れる利点があります。
これは3.11を教訓にした成果の1つでしょう。しかし場所をとるということで御舟町のある避難所では使っていませんでした。
避難所での居住スペースも特徴的でした。
- ・被災した地域ごとにゾーニングする
- ・先に被災してきた人が自由に場所取りする
- ・コーディネーター役が世帯の特徴に応じて場所を指定する(例:高齢者、要介護高齢者、障がい者、女性のみ、幼児・乳児がいる家族)
残念なことにこのゾーニングは担当した行政職員や団体などの「経験値」と「知見・知恵」によってかなりの差があったようです。熊本市のある避難所では、うるさ型の市会議員や町会長が先頭に立って仕切ってしまい、あとで調整にかなり困ったという話も聞きました。
せっかくきれいにゾーニングしていても避難所には出入りがあります。空きスペースにあたらしい人がやってくると双方にとって「見知らぬ人」となります。
5月の連休明けに学校再開のため、教室や体育館からの移動(引っ越し)が伝えられました。つまり避難所の「集約化」です。いたしかたない面はありますが、「なじみの小学校」から数キロ離れた見知らぬ避難所に集められることの不安感や孤独感はいかばかりでしょう。
おのずと隣の人と話すことや何かを頼むことを控えてしまいがち。やがて座りきり、寝たきりが廃用症候群(生活不活発病)をまねくことになります。
ボランティアで駆けつけている多くの人も「数日間~1週間」の人たちですから、被災した皆さんにとっては「初対面の距離」は縮まりません。
被災者間の人間関係、被災者とボランティアの人間関係の「距離を縮める工夫」がとても求められるなと実感しました。
次回は、初動1週間~3週間に求められる動きについて書きたいと思います。
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「コミュニケーションの技術~チームケアに生かすプレゼンテーション~」