高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
介護されし者:武久明雄さんのブログ
昨日のこと・・・武久明雄さんからケアタウン総合研究所のフェイスブックに書き込みがありました。
早速、武久さんのブログを拝見すると、次のような紹介文が書かれていました。
「1959年生まれ、山形県在住。44歳で脳出血に倒れ四肢麻痺の中途障害者となり、16特定疾患により介護保険の第二被保険者となる」
ブログの名称は「介護されし者」です。若年性認知症の方が当事者として語る機会はとても多くなっていますが、武久さんのように40代の仕事バリバリ期間に中途障害となった方が発信されることはとても貴重だと思います。
私の琴線に触れた一部をご紹介しましょう。
それは2月10日付で書かれたもの。ご本人の了解をいただいたので全文を転載します。
タイトルは「穏やか」です。
「僕が介護保険の介護サービス(デイサービスや訪問入浴など)に感じた共通点は“明るく元気よく”みたいな風潮だ。
デイサービスでの体操、レクレーションなどなど、訪問入浴スタッフのテンション・・・悪気があるのではないことは分っている。
幼稚園などの施設なら“明るく、楽しく、元気に、みんないっしょに”・・・みたいな雰囲気なのは納得する。
しかし、介護保険を利用しているのは高齢者、明るく元気にと言われても気持ちも体もついてゆかない。
50代の僕から見てもハイテンションに映っているのに、高齢者の方の目にはどの様に映ってるのだろう?
デイサービスでのレクレーションで“はやしたてられる高齢者”
その家の雰囲気とは関係なしに明るく元気にやって来る訪問入浴・・・
明るく元気に、を否定しているのではない
介護サービスはイベントではない、利用者の生活の一場面なのだ。
僕は、介護サービスを受ける時間、明るく楽しく元気にじゃなくていい。穏やかな時間を過ごせたら、それでいい、穏やかな時間、それがいい・・・」
山形放送?のビデオを見ると武久さんご自身はとてもポジティブな明るい方です。その武久さんが感じた「明るさ」への違和感はどこからきているのでしょう。
まずはデイサービスの現場の彼らに悪気がないのは、私も同感です。
しかし・・・
利用者のみなさんは日々つらい思いをされているから、せめて私たちくらいが「元気で明るく」を伝えないでどうする、という思い込みや決めつけがないか・・・。
障がい者のボランティアをやっている人たちにも、時として感じる「明るすぎる」という違和感・・・。
やたら明るいといえば・・・あのディズニーのスタッフたちにも感じる「作られた笑顔」。つまり誰に対しても平均的に見せる笑顔はあまりにもツクリモノです。
私がディズニーアカデミーを体験したときに、あまりに妙に感じたので、質問タイムで「みなさん、いつもあんな笑顔なんですか?たとえばバックヤードに入ったときとか?」と尋ねると・・・
「いえいえ、バックヤードではそんなことはありません。」
との回答・・・なるほど、サービスとしての笑顔なんだ、と納得しました。
さてここで精神科医・香山リカさんが、最近、気になるのはスピリチュアルにハマる人とはどういう傾向の人かを分析している一文を紹介しましょう。
「だましてほしいとまでは言わないが、とにかく明るい気持ちにしてもらいたい。希望や感動を与えてもらいたい。私だけそういう気分になれれば、他の人のことまで知らない。そうしてくれるなら、その内容や真偽のほどは問わないことにしよう・・・裏を返せば、それくらいいまを生きる人々は日常生活の希望や感動に飢えているということか。」(「スピリチュアルにハマる人・ハマらない人」幻冬舎新書)
この指摘はなかなか秀逸です。
どうやら、スピリチュアルにハマる心理の底には「かけがいのない私」「○○のために生まれきたという手ごたえ」を抱けない、「むなしさ病」を患った多くの人々が、宗教というハードな処方でなく、よりライトで、お手軽で、とりあえず幸せ気分にさせてくれるスピリチュアルにハマりたい気分が横たわっているのかもしれません。
このスピリチュアルという言葉を「介護の感動」と読み替えてみてはどうでしょう。つまり介護で元気や明るさを伝えて、もっとも自己肯定感や充実感に満足しているのは「介護職員」自身なら、だれのためのケアでしょうか。
なぜなら、明るさが大好きな武久さんでも、デイサービスでは「穏やかな時間」を過ごしたいと思われている事実・・・レクレーションでの盛り上げも、そのご本人が超ひと見知りや内向的な方なら「はやしたてられること」はとてもつらいことなのです。
利用者の笑顔を「よかった、○○さんが笑った」とスタッフたちが喜んでも、本人にとっては怒りや情けなさを笑いでごまかしているのかもしれません。
ですから、いつぞや活躍をされていた「笑う介護士」という人にはかなりの違和感を抱いたものです。介護の感動ばかりを売り?にする一部の介護ベンチャーのみなさんに違和感を抱いてしまうのです。
つまり、ケアは一方通行ではいけない。
その利用者の方にとって「穏やかな時間」はどういう過ごし方なのか、を丁寧に聞き取る、観察する、感じる、察することがプロとしての技術なのではないでしょうか。
当事者の本音を聞ける武久さんのブログを「お気に入り」にプラスされることをおすすめします!(^^)!
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