高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
認知症ケアとCADL
認知症ケアは、ここ15年ですさまじい進化をとげているな、と思います。介護保険前は、もっぱら医療において「薬による対応」しかないような状況でした。しかし、その薬物処方についても大きな動きが始まりました。
11月24日付けの日経新聞が、尼崎市の長尾和弘医師が代表となった「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の立ち上げを報じました。
設立総会では「薬を減らしたことで症状が良くなった患者の実例が動画で紹介された」ようです。
かつて、精神科病院に収容・隔離されていた時代、特養や老健などの施設では効率性と管理のしやすさから「流れ作業」「集団処遇」が当たり前だった時代が長く続いてきました。
しかし、介護保険法で、利用者本位や自立支援が高々に謳われことで、認知症であっても本人の意向を尊重し、施設・病院だけでなく「自宅や地域」で暮らすことが模索され、その1つとして認知症グループホームや小規模多機能などの地域密着サービスが生まれてきました。
まさに現場発のケア実践を制度が追いかけるような「一つの流れ」が、認知症ケアではとりわけ顕著に進んできました。これらを「おはよう21」誌1月号で永田久美子さんは「2極化」と指摘します。
ではこれからの認知症ケアがめざすキーワードはどのようなものがあるでしょう。「おはよう21」誌1月号よりひろってみました。
- ・本人のよりよいひと時を家族・地域とともにつくる(永田久美子さん)
- ・できることを支える支援型の介護(和田行男さん)
- ・利用者自らが生き抜く「支援の場」づくり(グループホームあいむ)
- ・ライフサポートと自己実現の視点で地域社会を支える(大谷るみ子さん)
- ・地域や社会とのつながりをもてるような支援(徳田雄人さん)
これらを読んでみると、表現は多少違えど通底している価値観は「本人らしさの尊重」です。
認知症となってもなじみの環境のなかで本人らしい心地よい暮らしが送れること・・・
これらは医療や薬物の処方だけでは実現できません。なぜなら、医療や薬物による治療は、疾患・障害の改善と進行の抑制、さらに疾患・障害からくる体調の悪化を改善することが目的であり、本人らしさや意欲を動機づけるものではないからです。
今回の長尾医師たちの提言は、「過剰処方」からくるBPSDがあるということへの現場からの訴えであり、そのことが本人にかなりの苦痛を与えていると予測されるからです。
CADL(文化的日常生活動作)は、まさに「本人らしさ」に着目したアセスメント領域です。これまで「いきがい、楽しみ、趣味、思い出、友人、役割」などはADL・IADLが最重視され、医療者や介護者にとっては「ついでの情報」でしかなかったのではないでしょうか?
しかし、本人にとっては「自分らしさ」を証明する「かけがえのない事がら」ばかりです。
槇原敬之が歌う「どんなときも」の歌詞♪にもあるように、「自分らしさ」のかけがえなさを歌い上げたことが多くの人に受け入れられた思います。
- ADL:歩けるようになる
- IADL:買物に行くために歩けるようになる
- CADL:孫たちに春物セーターをプレゼントするために新宿伊勢丹まで歩いていけるようになる
ADLでは身体行為表記になり、IADLでは生活行為表記ですが、CADLでは文化性表記(本人らしい望む暮らし、憧れの行為)となります。いずれが本人の意欲につながるでしょう。
まさにここに認知症ケアとCADLの「親和性」があります。
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