高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
ケアプランの有料化を考える
「ケアプランの有料化反対」とシルバー新報(10月9日付)が報じました。第10回日本介護支援専門員協会の千葉総会での鷲見会長の挨拶です。
「ケアプラン」というより「ケアマネジメント」が正式。そして有料化というより、自己負担化といったほうがいいでしょう。
ということで「ケアマネジメントの自己負担化」がまたもや俎上に上がってきました、とするのが正しいと思います。介護保険サービスのなかで唯一、自己負担が免除されてきました。これはどうしてなのか・・・さまざまな解釈があるでしょう。
ただし、他の介護サービスと比較してみると、「自己負担ゼロ」としてきた意味合いはどこにあるのでしょう。
日本の医療保険にケアマネジメントなる業務も介護支援専門員なる人も存在しません。それは「フリーアクセス」という何人たりとも自由に医療機関が選べるというルールがあるからです。
「この病院の〇〇医師は嘘ばっかり。腕も大したことないし」
「〇〇先生は現代の赤ひげだ。本当に心まで直してくれる」
など、患者は翌日、何の予告もせず受診先を変更することが保障されています。それに、ここ20年ほどで「セカンド・オピニオン」というアドバイスを受けることも一般化し、私も身内の手術にあたってはレントゲン写真をもらって数名の医師に教えを請うたことがあります。
しかし、ケアマネジメントにおいて、それは、まずもってむずかしい。なぜなら、要介護状態の高齢者は、情報収集も不十分なら自己判断もなかなかできない状態にあり、自己決定を支援する「機能」がどうしても必要となります。
まさに、それがケアマネジメントの存在価値です。ですから、ケアマネジメントは利用者本位が原則。本人の代弁者となって、家族やケアチームに意向を伝えることは、ときとしてそれは権利擁護(アドボカシー)の砦となる機能を意味します。
ですので、すべての利用者に「ケアマネジメント」という機能を自己負担なしで付加することにより、介護保険が「介護サービス利用保険」でなくすることができます。
ということを主張しても、おそらく財務省の圧力はおさまらないでしょう。それは介護保険への「国家財源の持ち出し」が予想以上に大きいからです。
10兆円ビジネスに成長した介護保険ですが、その5割を国の税金で負担していることになります。ですから、それを抑制するには・・・
- (1)対象者を減らす(要支援、要介護1を枠外にする)
- (2)介護報酬を減らす
- (3)自己負担を増やす(1割負担⇒2割負担、居宅介護支援の自己負担1割の導入)
ということが考えられますが、さらに次のことが進んでいます。
- (4)介護保険メニューを市町村事業に移管する
これは、地域包括支援センターが進める「新総合事業」のことです。
そしていよいよ、報酬抑制だけではむずかしくなれば支給限度基準額に手をつけるかもしれません。つまり・・・
- (5)要介護度別の支給限度額の減額
まさに、これに言及する日が来るような・・・。
マクロで考えると(4)は「一億総活躍」という号令?のもと、さらに進む予感がします。「高齢者が高齢社会を支える30年」という主張を一貫して行っている私としては一部重なる面はある(例:元気高齢者の社会的活用)のですが、そもそも立ち位置が異なります。
気がかりは(5)ですね。かならず揺さぶりをかけてくるのではと予感します。
さて、話は「ケアマネジメントの自己負担化」です。私は「反対」の立場です。1割自己負担化となると、居宅介護支援の費用(例:要介護3:13,530円/月)が利用者(家族)にわかるからではありません。むしろ、加算も含めた総額は利用者(家族)に示すことには賛成です。それは、それだけの仕事をしているかどうかを利用者(家族)に「見える化」することで、契約する居宅介護支援事業所とケアマネジャーに緊張感をもたらすことになるからです。
自己負担化すると、予想されるのは・・・
入院時・退院時加算はいらない、質の高いケアマネジメントを提供する特定事業所は敬遠したい、とならない保証はどこにもありません。
「加算なんかとらずにおたくの企業努力でこの程度はやってくれ、消費者は少しでも安い方がいいんだ」
「こっちも1割払っているんだから、自由にめいっぱいサービスを使わせろ」
などなど、驚くようなリクエストが山と届くでしょう。
介護保険制度の「自立支援」の理念を理解せず、一方的な消費者意識でケアマネジャーをアゴで使い?、介護サービスが使い放題になれば、介護保険財源はさらにひっ迫し、破綻へのスピードが加速することでしょう。
介護保険制度(介護サービスのみではありませんので、念のため)のフリーアクセスを保障するのが「ケアマネジメントへの公的支援」です。「無償」だから「無駄」なわけではありません。「無料」だからいらないわけでもありません。利用者の自己負担を避け公的支援を行って無償化を実現することにより、どの利用者にもケアマネジメントが付けられ、ケアマネジメントの中立・公正と公平さが担保されるのです。
「ケアプランの有料化」という表現は誤解を与えます。
ケアマネジメントの意義を現場から訴えていく時期に来ていると私は考えます。
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