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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

ケアプラン有料化が再び俎上に・・・

 今週の月曜日、日本経済新聞の一面に「ケアプランの有料化」がデカデカと掲載されました。厚生労働省は3年後の2018年度をめざした次回の介護保険制度の見直しに向けての動きです。居宅介護支援、つまりケアマネジメントでも利用者から自己負担を徴収する検討を進めていると報じました。

 居宅介護支援だけでも約4022億円(2014年度)の費用がかかっているため、その1割の402億円の出費を抑制ができるとしています。
 また、増大する介護保険費用の抑制につなげるための施策の一環という理由を上げています。ここで注意しなければいけないのは、利用者に1割の支払いを求めることが単純に給付抑制になるのかということです。

 実は、この論議は4年前の2011年にも行われました。その時の有識者や介護団体からの発言は賛否両論あり、多くは慎重派でした。給付抑制より給付拡大の力が働くのでは、というものでした。
 ちょっとご紹介しましょう。

  • ・ケアマネジメントは介護保険の入り口なのに、1割負担となれば居宅介護支援を利用しないことも懸念される
  • ・ケアマネジメントを利用しないために、適切なサービスの提供・利用でなく、お手盛りのプランが横行するかもしれない
  • ・セルフプランやサービス事業所によるケアプラン代行業などが多くなれば自立支援でない「サービス利用ありき」のケアプランになる
  • ・自己負担しているのだから、お客の要望を最優先するプランをつくるべきだ、という自立支援とは逆行する流れが生まれる。

 一方で、ケアマネジメントの質の向上に効果がある、という議論もありました。
 たしかに、自己負担化によりケアマネジメントの利用料の全額(平均13,800円)が利用者(家族)にわかるので、ケアマネジャーの選別もより慎重になり、ケアマネ間の質の向上が促がされるのでは、という主張もわかります。

 これまでは全額給付だったので、利用者(家族)にとって居宅介護支援は「無料(ただ)」同然でした。一般的に「無料(ただ)」のものに消費者は質を求めません。しかし1割の負担(例:1,380円)が発生すれば、それなり?のケアマネジメントを利用者(家族)は要望することでしょう。
 事業所間で競争意識も生まれるでしょうね。「法令通りやっています」というレベルでなく、たとえば「〇〇居宅介護支援事業所では、月1回のモニタリングでは、遠方のご家族に訪問内容を報告します。ご要望あれば、顔写真を撮影して主治医とご家族に情報提供します」という「質の競争」が始まるかもしれません。

 ここで問題になってくるのは、居宅介護支援の介護報酬が条件により異なる点です。要介護度によって異なるだけでなく、特定事業所I~IIIの指定を受けている事業所の報酬とそうでない事業所とは数千円の開きがあります。入院時情報連携加算、退院・退所加算なども複雑です。
 利用者(家族)にとって、この違いを理解することはなかなかにむずかしく、混乱の種になることでしょう。必要な業務(加算)なのに「高いから」と言われ、その業務をやらないとなれば「質の低下」を招くことになります。

 そして、他の介護サービス事業所のように利用者から「自己負担分」を集金しなくてはいけなくなるという業務も増えます。月1回のモニタリングが集金業務(残高確認、引き落とし確認)になるとしたら、利用者(家族)との間に「大きな溝」を生んでしまうケースも?

 本当に自己負担有料化が「質の向上」に連動する・・・果たしてそう単純に考えてよいものでしょうか。
 そもそもケアマネジメントを「ケアプラン作成」と矮小化している点が問題です。ケアプランのプランニングは一部の業務であり、利用者(家族)の意向や状況に合わせて介護サービス事業者や医療関係者と煩雑な調整・交渉を日々行っているのがケアマネジャーです。
 また「居宅介護支援=ケアマネジメント」を他の介護サービスと同列で語っていいものか、という根本的な問いもあります。

 ケアプランとは第3表ではありません。利用者(家族)の意向を受けとめ、それを実現するために課題・目標化した2表があり、総合的援助方針でケアチームの方向性を示しています。
 3表は1週間単位に見える化したスケジュールシートでしかありません。しかし世の中の人?は3表をケアプランと思っている・・・そもそもそこからズレが生じています。

 ケアプラン有料化なのかケアマネジメント有料化なのか・・・
 これだけでも大議論が必要となります。この動きに職能団体、業界団体がどのような動きや声明をだすか・・・。
 沈黙をしていると、ノーリアクションだと、勝手に「了解」ととってしまう向きもあります。

 素早く!的確な!対応が求められています。

 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第439号(無料)ムロさんの考察「シニア参加と新総合事業~「私たち」で支え合う関係づくり~」(第1・3木曜日に配信)です。メルマガは随時登録受付中です。⇒ ケアタウンの公式HP
  • 東京スクール 本人の「自立と自律」をチームで支えるケアプラン~自助・互助・共助のプランニングの勘所~(定員20名)
    |日 時|9月20日(日)10:30~17:00
    |詳 細|WEBにて→http://caretown.com/tokyo/caremanage2709.shtml
  • 東京スクール 「コーディネート~サービス資源の調整と交渉~」(定員20名)
    |日 時|10月11日(日)10:30~17:00
    |詳 細|WEBにて→http://caretown.com/tokyo/caremanage2710.shtml
 全国研修の様子は、ケアタウン総合研究所の公式FBをご覧ください。

研修会場・写メ日記

社会福祉法人ふくおか福祉サービス協会主催
「地域ケア会議と支援困難ケース対応」

名古屋市介護職員等キャリアアップ研修
「ケアプラン作成研修」