高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?
全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。
- プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)
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ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。
訪問専門の診療所、解禁!
地域包括ケアシステムに取り組む行政・医療・介護関係者に朗報です。厚労省が来年の4月をめどに、「訪問診療」のみの専門診療所を認める方針が発表されました。
これからは、診療の場が「自宅」(施設も含む)のみという診療所が誕生することになったのです。これはすごいことですね。診察室も医療機器がなくても開設が認められるわけですから・・・。
となると・・・初期費用はかなりコストを減らせることができます。
いま、訪問診療の患者の8割以上が介護保険の認定を受けている方です。要するに外来で病院に通院できない方々。このような人が、団塊世代が75歳以上となる2025年には約17床が不足することになります。
介護保険前は、病状が安定していても「在宅には戻せないから」と、病院で介護をしていました。いわば老人病院化していたわけです。
病状が安定しているなら、自宅や介護施設で医学管理および治療をしてもよいのでは・・・ひいては老人医療費の圧縮にも役に立つわけです。
なんと慢性期の患者が入院すると「月額約53万円」かかるといいます。これが訪問診療だと「月額32万円」で済むと・・・約4割減ですから大きいですね。
要するに、病院にいると、わずかな体調不良でも治療をするために、どうしても医療費が膨らむと・・・。
(※でも介護保険は利用するのですから、総額は変わらないのでは・・・?但し、健康保険の財源は軽くなる?・・・ってわけなのですかね)
訪問診療のスタンダードは、だいたい1回につき10分程度で月2回~3回程度が標準です。後は、血圧や脈拍の測定に点滴、健康相談とリハビリを行っています。このレベルの訪問診療で自宅での療養が続けられるのなら、本人にとってもメリットは大きいのかもしれません。なにより、自宅が一番ゆっくりできますからね・・・
しかし、訪問診療といえば先の医療報酬の改定で、集合住宅への訪問診療が約4割減額となりました。いわゆる集中減算です。
今回は、その轍を踏まないために、いくつかの条件をつけるようです。まずは診療所ごとに担当地域を決め、住民から依頼があれば訪問は義務付け(つまり拒否できない)となるようです。
それに診察の日程調整ができるようにコーディネーター役の事務員を置くことも義務づけられるようです。
そして2016年4月の診療報酬改定では、訪問診療の単価をどこまで引き上げられるか・・・金銭的な動機づけがいくらになるのか、そこが、厚労省との綱引きが始まることになります。
懸念されるのは・・・集中減算となったサ高住や住宅型有料老人ホームへの訪問診療の報酬と規制です。また在宅療養支援診療所のように、いくつかの「訪問診療所」が連携を組むことが条件となるのか。さらに入院が必要となったときの「病診連携」のような仕組みをどうつくるか・・・これらは市町村ごとの地域包括ケアシステムの中味にも大きく左右されます。
1年前にこの方向が明確になっていれば、第6期介護保険事業計画にもなんらか反映ができたのですが・・・(私も和歌山県御坊市の計画に参加したので、残念な気分です)
訪問診療所が併設で訪問看護ステーション持ち、さらにサ高住などを併設し、在宅での診療支援と集合住宅での診療支援が有機的に展開されることになるのか・・・
なにより、診察の設備が不要なので、30代~40代の訪問診療に熱意のある医師のみなさんの「受け皿」として活躍する場になればと願うばかりです。
いまから15年前、親しくしているベテラン訪問看護師さんが私に話した言葉が甦ります。
「病院より、自宅の方がずっと清潔ですよ!」
「え、え、そ、そうなんですか?」
院内感染の話題からこの展開になったのです。
そうかぁ、自宅の方がゆっくりできて、院内感染の心配もなく・・・あとは訪問医療と介護があれば、「いつまでも住み慣れた自宅で・・・」を現実にできるのだなと・・・
まさに地域包括ケアシステムがめざすところの1つの姿ですね。
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